1st STAGE - 8/15 Wed.
見せつけた力!小嶋、100km独走の快挙。 猛追の山根を寄せつけず王者に君臨。
大会2日目、いよいよ街から街を目指すステージレース本番が始まった。第1ステージは南信濃村をスタートし、二つの峠を越えながら伊那市まで北上、ラストに権兵衛峠が待ち受ける120.5km。今大会のひとつめのハイライトといえるのが、スタートから29kmの間に標高差1500mを一気にかけのぼる「しらびそ峠」だ。
峠への急勾配は「鬼のような激坂」と選手が評する日本屈指の難所。崖っぷちにまるで張り付くように民家がある下栗の集落は「日本のチロル」と呼ばれる独特の景観を見せる。一度下を見下ろせば冷や汗ものの谷底が口を開けている。スタート直後に襲い掛かるこの難所を制し、後の展開に繋げるのは誰か?午前7時50分、それぞれに思惑を抱く25名の選手がスタートしていった。
スタートからいきなり唐木(筑波)と松井(京大)がアタックをかけ、集団に戦慄が走る。松井の宣言通りのアタックに唐木が反応した様子。その後もペースは下がることなく、矢澤が集団のスキをつくアタックなど序盤から全く気の抜けない状態だ。
7.5kmで山崎(坂バカ日誌)がパンクし、大門運転のボンゴの救援を受ける。信州初のパンクが早くも発生。さらに藤田(クラブアングル)がチェーン外れで遅れを取ってしまい、必死でトップを追う。
8km地点、しらびそ峠への登りに入った。ここでいきなり町田(埼玉大)が単独アタックを展開。リーダージャージの小嶋を意識しながら必死で疾走する町田に集団のペースは上がる。町田が吸収され、遂に今度は小嶋が飛び出した。それに山根(セレーノ)と寺本(ペアラ)が反応。3人の逃げから寺本が遅れ、後方もバラバラ状態。
下栗の激坂がせまる。そびえる山を見上げた小嶋は「燃えた。行くしかない」と決意。一方、山根は「ここで無理に反応するより小嶋を泳がし、様子を見る」と判断。15km地点、下栗集落の一角で小嶋が若干の差を開けて出来た差。この一瞬から小嶋、山根両者の独走が始まった。
29km地点、しらびそ峠に達したトップは独走の小嶋、1分遅れて山根。一方、後方ではチェーン外れで遅れを取った藤田が激坂でおおいなる巻き返しを図り、しらびそ峠で小嶋から5分遅れで形成された3位グループに到達。メンバーは渡邊(京大)、寺本(ペアラ)と藤田の3名。さらに後方は、渡辺(徳島大)、パンクを喫しながらも復帰した吉田(阪大)、柳井(阪大)、紫芝(Verdad)らが順位を入れ替えながらバラバラと峠を通過。混沌状態である。
しらびそ峠を下り、長い平たん路に至る。依然として小嶋、1分遅れて山根、トップから3分15秒遅れで寺本、渡辺、藤田の3人という形成。猛然と突き進む小嶋。一方で山根は前にも追いつけず、後方を待つには長過ぎる両者との距離に宙ぶらりん状態。「少人数でスピードを稼ぎラストで勝ちに出る」作戦だった山根は、思わぬ誤算に苦しめられた。
灼熱の太陽が照りつけるコース。焼けるような暑さで、コーラ、水、アクエリアスが驚く程の早さで減っていく。パンクも多い。しらびそからの下りで10位前後を走る笹井、さらに50km地点で矢澤がパンクで立ち往生の不運。ここで松村(京大)、細川(京大)、山崎(坂バカ)が迷子になったことがスタッフに知らされる。
72.3kmの分杭峠。トップ通過の小嶋と山根の差は3分差に広がった。後方3名と山根の差は1分30秒と微妙。3位グループは堅調だが、その後方では紫芝を筆頭に前述のメンバーが時にまとまり、時に離れながら必死で前を追う。
お盆で賑わいを見せる伊那市街をくぐり抜けた選手達。前の5名の位置はすっかり固定化してしまった。「信号で止まる度に追い付かれるのでは、と焦った」という小嶋。しかしなかなか距離は縮まらない。山根を追う3人は、平たん路で渡辺が引きまくり、登りで藤田が本領発揮するもなかなか山根に届かない。まさかこのままで終わるのか?小嶋単独首位、それを追う山根、遅れて3名でラストの権兵衛峠に突入。
激しく水を所望する小嶋。相当疲労がきているようだが「権兵衛は自分の脚に合う峠」との持論通り、力強いペースで前を目指す。数分差になった山根は淡々と小嶋を追う。
うっそうと茂る夏草に囲まれた長い長い登りを、小嶋が身をよじらせながら進む。逃げ続けた小嶋と追い続けた山根。最終的に9分22秒差となった二人の100kmに渡る独走劇が終了した。3位は序盤のトラブルから見事な追い上げを見せた藤田となった。
きょうのひとこと(コメント収集 by 近藤知里)
小嶋:予定通りの走り。明日は乗鞍ねらいです。
渡邊(て):3人だから走れたと思う。平地が楽だった。
柳井:山岸さんに平地で引っ張ってもらった。最後の権兵衛はサイクリング気分。
山本:暑かった。完走できるかどうか心配になってきた。
寺本:疲れました。平地で3人で競ってスピードを上げた。完走を目標に頑張る。
藤田:始めのチェーンはずれが初歩的ミスでアホだった。
吉田:景色がよかった。最初のしらびそは余裕があったので楽しめた。
渡辺(たかひろ):哲平くんに負けたのが悔しい。明日は哲平くんについていってワタナベトップを狙います。
山根:しらびそで小嶋を逃したのが最大の失敗。少人数で走って力を温存したかったが、それが無理なことが分かった。明日からは作戦を練り直します。