4th STAGE - 8/18 Sat.
小嶋、ツール・ド・信州2001完全制覇!全ての山岳を制し三連覇達成! 総合2位は山根(セレーノA&Tヤマダレーシング)、3位は藤田(クラブアングル)
大会5日目最終日、松原湖畔の宿で目覚めた選手団は、朝の高原の空気を切り、国道ぞいの小海町役場前のスタート地点へと下った。午前7時15分、ツール・ド・信州2001最後の戦いが始まった。戦線からは膝痛のためスタートを断念した板東(筑波大)と松井(京大)が離脱。最終日は23名による出走だ。
第4ステージのコースは、小海町をスタートし、馬越峠、信州峠からクリスタルラインを抜け、山梨県牧丘まで一気に下り、クライマックスは日本で最も標高差の大きい峠として知られる大弛(おおだるみ)峠を目指す。標高500mの町から2400mの峠へ至る30kmを延々登り続ける大弛峠は、サイクリストの中では語り草になる程の厳しさを擁する峠だ。ラスト10km地点から3kmに至っては、ボコボコの路面に石や砂利が散乱するガレ場といえるダートが続く。大弛峠のみならず全コースにおいて悪路、落石、工事区間が選手を待ち受け、もはやこれ以上に厳しいコースはあり得ない、そんな怖れを覚える118kmである。
スタート直後、小海町の市街地を抜け、田舎道に入ったところでいきなり唐木(筑波大)と山岸(東大)が激しいアタックを仕掛ける。今大会の定番メニューとなった唐木のスタートアタックだが、今日は山岸が「東京で応援してくれる仲間から『ビデオに映れ!』と要請を受け」それに応えるべく果敢に飛び出した。しかし勢いづいた唐木が山岸を振り切り独走し、後方からは小嶋が唐木を追ってスパートをかける。
しばらくして唐木と小嶋は集団に戻り、続いて矢澤(京大BOMB)がアタック。これに小嶋が再度反応し、登りに差し掛かった。序盤に果敢な走りを見せた山岸(東大)は、メカトラに襲われ、立ち往生する不運。後方オフィシャルカーに積んでいたDNSの板東の自転車を代車に使うが、その後リタイヤとなった。
馬越峠でやはり出て来たのが、リーダージャージの小嶋。これまでのステージ、全ての峠で首位通過している小嶋はやはり今日もひとつめから狙ってくる。小嶋と集団の差は一気に2分25秒まで開き、集団では渡邉(京大)、笹井(フーバーネットワーク)、吉田(阪大)、矢澤らが前方に位置している。
単独で馬越峠を獲った小嶋の背中を追って、峠から下りたところで渡邉、笹井がトップ追走を開始。2つ目の信州峠では小嶋から2分53秒遅れで渡邉、笹井が通過し、5分遅れで5人の集団という時間差になった。その後、笹井は失速し集団に吸収される。
3つ目の山岳ポイントである瑞がき山荘ポイント(43.1km)では、トップ小嶋、5分25秒差で渡邉、35秒遅れて笹井、藤田(クラブアングル)、町田(埼玉大)、紫芝(Verdad)、山根(セレーノA&Tヤマダレーシング)、寺本(ペアラ)の集団となった。
次の木賊峠で、すでに小嶋は渡邉と6分50秒もの差を広げ、微塵の消耗も感じさせない。「いくら追ってもタイム差が広がる、そんな感じだった」(渡邉)。荒れて砂の浮いた路面を慎重かつ確実なラインで下る小嶋は着々と勝利への道をひた走っている。
コース半分の地点となるチェックポイントを過ぎ、乙女高原の登りに入った。ここで、渡邉を追う後方集団内でスピードが上がり、渡邉は吸収されてしまう。小嶋とのタイム差「10分30秒!」の告知を聞いた寺本が一気にペースアップしたためだ。打倒小嶋を期する友人・山根の逆転追走計画を共にもくろんでいた故に「今、追わなければ限界だ」と危機感にあおられてのスパートだった。
乙女高原からの下りで追走集団内の紫芝が前輪パンクで後退。前方では小嶋があいかわらずステージレースの疲れを全く感じさせない力強さで独走を続けている。いよいよ山梨県牧丘町内に下り、大弛峠への登りに入った。山根、寺本、渡邉、町田、笹井からなる追走集団は、峠の登りで一気にバラけ始め、後方ではホィール交換した紫芝が必死で追い上げてくる。乙女高原の登りで追走集団から遅れた藤田も、大弛でクライマーぶりを発揮し紫芝と共に笹井、町田、渡邉をとらえ抜き去った。
「タイム差10分」。大弛の登り序盤で告知を受けた2番手の山根は、途端、身に付けていたポンプ、チューブ、工具など全てをサポートカーに投げ入れ、猛然とペースを上げ始めた。残る力を全て振り絞っての追走スタートである。
しかし、小嶋のパワーは衰えることを知らず、一時は7分近くまで山根に差を詰められたものの、残り15km地点の金峰牧場を越えて緩やかになった地点では一気にスピードに乗って時速30km/hを下らぬ勢い。いよいよダート区間に入った小嶋、道なき道ともいえるガレ場を淡々と、一度も足を付くことなくクリアし、峠までの残り6kmを迎えた。
一方、山根はダート手前の悪コンディション路でよもやの前輪パンク!駆けつけたサポートカーの代輪は既に紫芝に与えられていた。やむなく代輪で残っていたリアホィールのチューブを抜き取り、交換することとなった。ここで山根と2分40秒差だった寺本が山根を抜いて2位に浮上。ダートも難なくこなし、残りの舗装路へとひた走っていく。
山根はパンク交換中に藤田、続いて紫芝にも抜かれてしまう。しかし、ようやくコース復帰しダートに突入。ダートでは本業がMTBのエリートライダーである紫芝が遂に「本領発揮」し、見事なライン取りで藤田をとらえて3位に上り詰める。その後、ダートを終えたところで後方から渡邉が浮上し藤田を抜いて4位となる逆転劇が続く。
ダートをクリアして残り6km、針葉樹林が独特の景観を見せる標高2400mの峠はすぐそこ。ハイカーの車が往来する峠手前の道で、小嶋によるウィニングランが始まった。スタッフが大きく手を振るフィニッシュライン、全てのステージ、すべての峠を制した小嶋が5時間15分34秒の戦いを終えて、ツール・ド・信州2001の王者となった。15分55秒後、寺本が待望の2位フィニッシュ。昨年、小嶋を最もおびやかす存在だったにも関わらず膝を傷めて途中戦線離脱だった寺本は会心のラストステージで大会を終えた。3位は、お家芸でダートを疾走した紫芝がこちらも期間中最高位でフィニッシュ。4位は中盤、果敢に前に出た渡邉が、5位は痛恨のパンクながら最後まで小嶋を攻め続けた山根が、6位は藤田、7位は「集大成の走りが出来た」町田が充実の笑顔でフィニッシュラインを切った。
小嶋による3連覇で幕を閉じたツール・ド・信州2001。個人総合2位は山根、3位は藤田となり、1回生選手に贈られる新人賞は総合14位の山本(京大)が、特別賞(庄司賞)には第4ステージで2位に入った寺本と今大会、最も長い時間走り続けた寺島(坂バカ日誌)が、そしてアタック賞には連日、レースに華を添えた唐木が輝いた。
25名のロードマンと、14名のスタッフがそれぞれの想いを抱き峠に挑んだ5日間、様々なエピソードを生んだツール・ド・信州2001がここに終了した。