1st STAGE - 8/14 Thu.
白石、雨、雨、雨の第1ステージで全山岳制覇!リーダージャージを奪取!
明け方、屋根を叩く雨音が響いてくる。昨日、快晴だったプロローグから一転、真夏であることを忘れさせる冷たい雨のステージ幕開けだ。三々五々、起き出してきた選手たちの表情も曇りがち。それぞれにウィンドブレーカーを身にまとい、屋根の下で大会の始まりを待っている。
ツール・ド・信州大会二日目。いよいよ幾つもの峠を越え、町から町へと移動するステージの始まりだ。この日は、野沢温泉・内田屋をスタートし、いきなりカテゴリー1級の登りが寝起きの選手を歓迎する。毛無山からカヤノ平まで下り、鬱蒼とした緑が溢れる奧志賀高原から志賀高原を南へひた走り、笠岳を経てカテゴリー1級の万座峠、そしてフィニッシュの渋峠を目指す長丁場、116.8kmのコースだ。
午前7時、前夜の宿・内田屋の人々の声援を受けながら雨に塗れた選手らがスタート。総勢40名のロードマンが、これから始まる過酷な戦いに向けて静かに峠へと吸い込まれていく。その静けさを打ち破ったのは、山本(京大競技部)。例年、繰り広げられるスタートアタックの先陣を切っての飛び出しだ。それに真剣勝負で立ち向かい、山本をつぶしたのは渥美(SPADE・ACE)。
「リーダージャージ、アタック!」毛無山の登りにまだ数kmにも至らない時点で、今度は高橋(京大競技部)が一気に飛び出した。最大のライバル、前日2位の白石はスピードメーターを調整しているため集団中ほどの位置にいる。高橋は集団から一気に差をつけ早くも独走を開始!その後ろを船山(昭和大学自転車競技同好会)、山本(京大自転車競技部)、梅津(APEX)の3名が、さらに栫井(大阪大学OB)、高坂(パオパオビール)、奈良(チーム物見山)が追走している。
ツール・ド・信州独特の早い展開は今年も健在だった。まだまだ長い旅路の始まりで既に集団はプチプチと寸断し始めている。前をひた走る高橋をとらえるべく、白石がじりじりと前へ上がり始めた。11km地点、遂に白石が高橋の背中をとらえ、そのまま二人はしばらく並走するが白石が高橋を引き離し、トップに踊り出た。
【毛無山 C1】白石--高橋--船山--渥美--関根--渡邊--奈良
カヤノ平へ下り始めた選手たち。毛無山をトップ通過した白石の独走が始まった。コンビニも民家も何も無く、ただひたすら緑の樹木がロードサイドを埋め尽くした林道を、たった独りで走り続ける白石。ゆるやかな下りを奥志賀への分岐路目指し進んでいると・・・「クマ!!」なんと白石の手前5m辺りでロードサイドから子熊が出現!そのまま白石の前を横切って森林へと消えていったのだ。驚愕の表情を見せる白石と後方のサポートカー、これでさらにスピードが付いたのか、白石と後方との差はぐんぐんと開き、そのまま奧志賀高原の登りへと突入。恐るべしコースである。
そぼふる雨のなかを軽快に登る白石。追走するのは、渡邊(ナカガワAS・K'デザイン)、高橋、渥美、船山の4名。そこから関根(TEAM GIROキャノンデール)が徐々に遅れをとる。さらに後ろには奈良、高坂、昨年スタッフだったが選手として復活した井上(インプレッサ販促委員会)、斎藤(KUCC)、柳井(阪大自転車競技部)、渋谷(ミノムシ市川)らが続いている。奧志賀林道での白石と後方集団との差は40秒。まだまだ分からないタイムである。
【奧志賀 C3】 白石--渡邊、高坂、渥美、船山(+40s)--関根--奈良、高坂、井上、斎藤、柳井(+9m)--渋谷
スタートから約2時間が経過。63km地点、3つ目の峠を目前にした笠ケ岳のふもとで選手らはチェックポイントを通過。ツール・ド・信州ではコースの中ほどに選手が無事に通過したことを知らせるサインの記入と、補給を受け取るためのチェックポイントを設けている。一番最初に飛び込んできた白石は自転車から降りず、いちもくさんに笠ケ岳を目指す。続いてやってきた4名の追走集団も、取る物もとりあえずチェックポイントを後にした。しかし、ここでハプニングが勃発!登り口の分岐路で追走集団がコースミスしてしまい、必死でスタッフが連れ戻すも約3分のタイムロスを喫してしまう。その間も白石はグイグイと前進を続けている。
【笠ケ岳 C2】白石--渡邊--船山--高橋--渥美------斎藤--奈良--高坂------柳井
笠ケ岳から選手は一路、高山村へと下る。ロードサイドには広大な牧場が広がり、牛が草をはんでいる。「路面には馬糞が・・・すべりそうだった」とはある選手の談。ガードレールも無いテクニカルな急コーナーが続く下りで、選手は慎重に下っていく。いよいよラストから二つ目、カテゴリー1級の万座峠が選手を迎え撃つ。
「いじめ虐待110番に通報するぞー!」独りぼっちが寂しすぎるのか、白石が突然、ハードなコースにキレてしまい、蛇行しながら叫び始めた。それだけまだ精神的に余裕があるのだろう。その背後の集団では渡邊が単独で前に飛び出した。白石との差は6分半まで開いている。詰められるか?一方で渥美が苦しい表情で後方へと後退。リーダージャージの高橋と船山は渡邊を必死で追っている。彼らから3分半遅れて高坂、奈良、斎藤が3名体制で黙々とペダルを踏んでいる。峠を残り二つにして、高坂、奈良からは所持していたボトルがサポートカーへと放り込まれた。いよいよ終盤、先行する学生を後方から淡々と追う社会人トリオはどれだけの距離を詰められるか?
【万座 C1】白石--渡邊--船山--高橋-----斎藤、奈良、高坂
湯気がたちのぼり、硫黄の匂い漂う万座温泉を抜け、いよいよ最後の峠、渋峠へと突入した。道中、熊に遭遇した以外はパンクもメカトラもなく順調に走り続けた白石。全ての峠をトップ通過した彼が、困憊の表情ながら笑みをたたえてフィニッシュ!3分34秒差まで白石を追い上げた渡邊が2位、初出場で頭角を表した船山が3位、そして奈良、斎藤、高坂と続き、序盤に果敢なアタックで逃げた高橋は7位でリーダージャージに別れを告げた。また、一昨年の本大会で最も長く走った寺島(坂バカ日誌)が14位の快進撃でサポートスタッフと共に笑顔でステージを終えた。 雨、雨、雨と最悪のコンディションになった第2ステージ。この日、細川(京大競技部)、岡村(APEX)、鈴木(筑波)、南谷(大工大)がリタイヤとなった(大会特別規則により最終走者の10%増しタイムで明日からも走行可能)。36名5完走となった。
第3ステージは山之内を出発し、渋峠で県境を越え一路、地蔵峠へと向かう。ラストは「日本のラルプ・デュエズ」車坂峠を目指すダイナミックなレイアウトである。
●スタッフ・稲井ちゃんの「チェックポイント日記~つぶやき」
いちばんに来た白石は止まらず「うしろ来てますんで」。ナベ、高橋、あつみ、船山はリラックスモードです。ナベちゃんは、白石が止まらずに行ったのを聞いて「がんばるなぁー」。 第3集団、めちゃキンパクしている。井上(しょ)のがんばり目ざましい。しぶやさん、山本をちぎる。がんばれわかもの。 15位から20位、バタバタバラバラ。Giroの人、しんけんなかんじがした。 寺島さん見ちがえるほどの順位→寺島さん入れ替わっている説。 岡村さん、「脂(アブラ)が無くさむい」とふるえている。細川、南谷もリタイヤ。朝月さんバナナチップ、ぽりぽり。綾野さんチェックポイントでゴミをいっしょにひろいました。まったりモード。オトナのサイクリスト?