3rd STAGE - 8/16 Sat.
スタート直後からアタックの応酬!高橋、細川、友情のランデブー!
振り続けた雨がようやくあがり、選手、スタッフに安堵感が広がった大会4日目の朝。前日のフィニッシュ地点、車坂峠のふもとに位置する宿舎を出発したキャラバンは、一路、武石村にある第3ステージスタート地点へと旅立った。
凍えるような雨のステージを二日間に渡り経験した選手ら。この日は、大会で最も高低差が低く距離的にも短い、比較的ラクなコースレイアウトだ。コースは武石村を皮切りに、美ヶ原から霧ケ峰、和田峠を経て観光客でにぎわう車山を横目に茅野市からフィニッシュの麦草峠を目指す風光明媚なレイアウトである。一部の選手からは「移動日」という言葉がゆきかう。しかし、雨続きの二日間で疲労が一気に心身に押し寄せている彼らには、94kmに渡る戦いはやはり過酷であることに間違い無い。
7時30分、武石村のコンビニ駐車場から一斉にスタート。この日は、前日以来マシントラブルで走行を断念した南谷、体調不良の渋谷と松村、風邪で戦線離脱となった殿岡が残念ながらDNSとなり、36名の出走となった。「ああ、トイレ・・・」スタート15秒前に突然、もよおしてしまった細川(京大競技部)がコンビニのトイレに駆け込み、30秒近く遅れてあたふたと集団に追い付いた。
「毎日、序盤のアタックで活躍した選手に賞を与えてください」と東京大学の山岸選手から「山岸賞」が設定され、連日、飛び出しが繰り広げられるこの大会。この日は、金森(パナソニック)、栫井(大阪大学OB)の初出場コンビが存在感をアピールすべくスタート直後からアタック。これに反応したのが栫井の後輩、柳井(大阪大学自転車競技部)。先輩らをかわした柳井が独走を開始し、続くは寺島(坂バカ日誌)、高橋(京大競技部)、金森、やや遅れて細川、栫井が集団から飛び出す格好となった。
「ヒイヒイハアハアゼエゼエ」・・・柳井特有の苦しい息づかいが響き渡る。約4kmに渡る独走は、後方から追い上げてきた高橋、細川の第2ステージリタイヤ組に背中をとらえられる。ここから、高橋、細川の長いランデブーが始まった。集団からは他にも寺島(坂バカ日誌)や渥美(SPADE・ACE)、川嵜(TEAM GIRO)らが飛び出している。リーダージャージの白石を含む集団は、淡々と前の展開を見守っている。
【10km】
高橋、細川---栫井、金森---柳井--寺島---渥美、川嵜--集団
美ヶ原への登りに突入した。高橋、細川の2名は依然としてコンスタントに逃げ続け、17km地点で早くも集団と7分40秒の差を付けた。2名と集団との間には3分差で渥美、その40秒後に金森、そして集団に吸収目前の苦しい走りを強いられているのが栫井、その背後には紫芝が元気にペダルを踏んでいる。美ヶ原の登りに差し掛かった頃、ようやく集団から大きな動きが。奈良(チーム物見山)、船山(昭和大学自転車競技同好会)らが勢いよく前に飛び出し、それに反応した斎藤(KUCC)、渡邊(ナカガワAS・K'デザイン)と共に白石も前に出て、いよいよ追走集団が形成された。
普段から仲の良いチームメイトの高橋、細川は美ヶ原を息の合った走りで快調に飛ばして行く。25km地点、いよいよ美ヶ原の山岳ポイントがせまってきた。勝負はいかに?と思いきや、「お前取れよ」「いや、お前こそ」と譲り合う友情!結局、高橋が細川に押し切られ、カテゴリー1級の美ヶ原をトップ通過した。
【美ヶ原 C1】
高橋、細川---渥美(+4m20s)--金森(+5m31s)--紫芝(8m5s)--渡邊、白石、奈良、船山、斎藤(+8m27s)--川嵜、関根(+8m45s)--石川、柴田、高坂(9m10s)--栫井
地名の由来の通り、霧に包まれた霧ケ峰で濡れたサングラスを渥美と高坂がサポートカーに預けた。この辺りで高橋、細川との差が8分半近くとなったことを知らされた追走集団にようやくエンジンがかかった。チェックポイントの霧ケ峰ドライブインでも、あわただしく補給を手にコースへ飛び出して行ったリーダージャージのグループ。そんな中、チェックポイントには高坂ファミリーが賑やかに「がんばって~!」と大声援を送り、大会に華を添えた。ほどなくふたつめの山岳ポイントを迎えたトップ2名は、今度も高橋が1位通過となった。
【チャプリン C4】
高橋、細川--奈良、船山、渥美、関根、斎藤(5m30s)--渡邊、白石(6m5s)
観光客で賑わい、クルマが混みあう大門峠から白樺湖を左手に見ながら茅野市・芹ケ沢へ下ったキャラバンは、最後の峠・麦草へと突入した。およそ「メルヘン街道」という名に似つかわしくない峠道でラストランを繰り広げる高橋、細川。ここまで献身的にボトルを高橋に渡し、調子をうかがうなど高橋に尽くしてきた細川が、遂に力尽きて失速し始めた。後方では、追走集団から白石、渥美が前に出るが「総合に関係の無い選手の逃げだから」と白石はあくまでマイペースを保ち、結局、高橋とのタイム差7分50秒で麦草を登る。驚くべきは昨日からさらに躍進した渥美。力強いぺダリングで白石と共に走り3位をキープしている。その後方では、奈良、斎藤、船山、渡邊が登っている。
【麦草峠中盤】
高橋---白石、渥美(7m50s)--細川--(9m50s)--奈良、斎藤、船山、渡邊(10m5s)--関根--石川--柴田--高坂--紫芝
白くガスのたちこめる峠で幾つものコーナーを経て、ようやく峠の終盤に差し掛かった。単独で走る高橋は疲労感を見せながらも、まだ軽快さを失うことはない。その背後で白石、渥美が淡々と前に進む。後方からは渡邊が抜け出してきた。その後ろに船山、斎藤が続く。苦しそうな奈良は必死で2人の背中を追う。
「やった!」チームメート、細川との共同作業で手に入れた二つめのステージ優勝。前日のリタイヤにより総合成績とは縁が無くなった高橋だったが、またひとつ信州での勝利を手にした。2位の白石はリーダージャージをそのまま守り通し、3位に入った渥美は総合成績を7位に上げた。
大きなアクシデントもなく無事に3日目の宿、松原湖畔の小海町にたどり着いたキャラバン。明日はいよいよ最終ステージ。最も長く、最も厳しい大弛峠が選手らを待ち受けている。何とか笑顔で大会を終えることができますように、そんな願いを胸に恒例のカツカレーをほおばる選手たちであった。