4th STAGE - 8/17 Sun.
TOUR DE SHINSHU 2003 4th STAGE 小海町-大弛峠 118km
白石、2年目の信州で堂々の総合優勝!雨、雨、雨のツール・ド・信州が閉幕!
5日目の朝を迎えたキャラバンは、いつもより30分早い6時半のスタートに向け、せわしなく身支度をしている。前日のステージが予定よりも早く終了し、昼すぎには宿舎に入り休息を取ることができた選手達。夜は宿の目の前にある松原湖で思いがけず美しい花火を目にし、連日のハードな日程のなかで少しばかりリフレッシュが出来たようだ。
ツール・ド・信州2003最終日となったこの日は、昨年同様、最も長く最も厳しい峠が一行を待ち受けている。既に過去2回の大会において最終ステージのコースに選ばれている、このコース。宿舎のある小海町の佐久甲州街道をスタートした選手達は、レタス畑が広がる北相木村から南相木村をぬけ、馬越峠から信州峠へ。県境を越え山梨県に入り、瑞垣山荘、木賊(とくさ)峠、乙女高原などが続くクリスタルラインを走行。その後、一気に牧丘町まで下りきり、最後にして最大の難関・大弛峠を目指す。
標高500mの牧丘町から2400mの峠、すなわち1900mの標高差は日本最大。サイクリストの間で最も恐れられているコースである。距離にして30kmという気が遠くなるような道程、しかもラスト8km地点からの1kmは未舗装路のガレ場が続く悪路が待ち受ける。そんな過激すぎるコースを選手らは5つもの山岳ポイントを通過した後に挑まねばならない。前日のコース説明で初参加の選手から「こんなコース作ったの、誰やー!!」という怒声があちこちから響き渡った事は言うまでもない。
6時30分、キャラバンは国道141号線・佐久甲州街道を出発。トンネルをぬけて馬越へと向かう田舎道に入ったところでパレード解除となり正式スタート。出走選手は36名。前日に抜けた殿丘、松村の他、柳井(大阪大学自転車競技部)も故障のため戦線離脱となった。マシンを壊していた南谷(大阪工業大学)は柳井の自転車を借りて出走。また、この日は、ツール・ド・信州初代山岳王('98年)となった桜井悟朗が差し入れの「干バナナ」を手に登場。キャラバンの仲間入りをしてステージを盛り上げることに。この時点では雨が降ることもなく、曇り空だったのだが・・・。
スタート直後、金森(パナソニック)、山本(京大競技部)が勢いよく飛び出し、早くも集団から数名の選手が動き出す。7.5km地点では、山本、江國(TEAM GIRO)、井上(インプレッサ販促委員会)、石川(東京工業大学サイクリング部)、船山(昭和大学自転車競技同好会)らが前に飛び出してグループを形成。15秒遅れて一色(KUCC)、金森、渡邉(ナカガワAS・'Kデザイン)、30秒遅れて岡本(シマノドリンキング)、55秒で栫井、そして1分10秒で集団、そこからも高橋(京大競技部)、渋谷(ミノムシ市川)らが飛び出しを図っている。
13kmを経過し峠への分岐に差しかかり、前方の選手がバラバラと分断され始めた。ここまでいっぱいに足を使った金森、井上、栫井らが集団へ吸い込まれ、トップは山本、船山、石川の3名に絞られた。さらに峠の登り序盤で山本が徐々に後退、残ったのは石川と船山の2名のみ。期間中、宿の部屋を共にしてきた仲の良い2人は息の合ったリズムで馬越の登りをひた走り、そのまま峠をトップ通過。後方からはリーダージャージの白石(シマノドリンキング)や渡邉、高橋(京大競技部)が上がって来た。その差、30秒。
【馬越 C3】
石川、船山---白石、渡邉、高橋(+30s)---渋谷(+53s)---関根--奈良--斎藤--山本--紫芝--渥美--細川--高坂
「紫芝、パンク!」悪天候が続いて荒れに荒れている馬越の下りで11番手に付けていた紫芝がパンク。慣れた手つきでパンク修理するも時間的に痛いダメージを受けてしまう。農耕車が走る信州峠までの道のり、必死で逃げる船山と石川だったが、後方からやってきた白石、渡邉に背中をとらえられ、トップグループは4名となった。その後ろでは渋谷がこれまでにない頑張りで5位走行、さらに渥美(SPADE・ACE)がめざましい勢いで6位に浮上。カテゴリー4級の信州峠は白石がトップ通過となった。
【信州 C4】
白石、船山、石川、渡邉----渋谷(+1m25s)--渥美(+19)--高橋、奈良、斎藤、山本、関根
「今度は関根がメカトラ!」直前の落車のダメージで、ホイールにリアメカを巻き込んでしまった関根。すぐ近くを走行していたTEAM GIROのスタッフが調整を試みるが復旧不可能。「ああ、カンパレコードが・・・」というため息と共にリタイヤを喫してしまった。路面もさらに悪くなり、空からはにわかに雨がぽつぽつと落ちてきた。続く瑞垣山荘前の山岳ポイントもトップは4名で通過。その後ろは、渥美が渋谷をかわして単独でトップにせまり、斎藤と奈良がペア走行、山本と高橋が続き、高坂がこれまでにない辛い表情で走っている。
【瑞垣 C4】
白石、石川、船山、渡邉----渥美(+45s)---渋谷(+1m56s)---斎藤、奈良(+3m35s)----山本、高橋----高坂----川嵜、江國、柴田、南谷、井上、紫芝
緑が鬱蒼と茂り、行き交う車もほとんど無い木賊(とくさ)峠への登りで石川がトップから遅れ始め、代わりに渥美が力強い走りで石川をかわし4位に踊り出た。いよいよ本領を発揮し始めた白石は、峠直前になって前に飛び出し、この日3つ目の先頭通過をクリアした。一方、6番手に付けていた渋谷はパンクをして遅れを強いられてしまった。
【木賊 C3】
白石、船山、渡邉---渥美(+1m21s)---石川(+2m)---渋谷--斎藤、奈良(+6m23s)---山本、高橋
落石、朽ちた木々、砂、枯葉などが道のあちこちにひしめく悪路が延々と続く木賊の下り。選手らはこの日前半最後の山岳ポイント乙女高原を目指し、慎重に走り続けている。森林のキャンプ場に位置する57km地点のチェックポイントにたどり着いたトップには、既に渥美が合流し、4名となっている。「渥美さんが先に行きました!」チェックポイントで補給を受け取った渥美が白石、渡邉、船山を置いて先行。その後、乙女高原への登りで3名に追いつかれた渥美だが、僅かなチャンスをつかまんばかりに緩斜面になる度に3名を抜き去り、また抜き去られ・・・の熱い攻防が繰り広げられた。そして乙女高原に至る直前、渡邉が仕掛け前に出るが、白石が背後に執拗に食い付き渡邉を離さない。そして山岳ポイント直前で一気に前にダッシュした白石だったが、大会が設定した場所より前の箇所をポイントと間違え渡邉、船山にポイントを譲ってしまった。
【乙女高原 C3】
渡邉、船山、白石---渥美---石川---奈良、斎藤---山本--高橋--紫芝--高坂
70km地点、乙女高原のピークを越え、キャラバンは長い長い下りに入った。山梨県牧丘町まで一気に1200mもの標高差を下り始めた。小雨ぱらつく中、標高が下がると共に気温は徐々に上がり、ふもとの町まで選手らはそれぞれのペースで注意深く下っていく。しかし、パンクを遅れを取り戻そうと急いだのだろうか。渋谷がコーナーで転倒してしまい、無念のリタイヤとなってしまった。
ぶどう畑が傾斜面に続く牧丘町まで下りきったトップグループは、目の前にそびえる大弛を前に、とうとう最後の戦いへと突入。トップは依然として白石、渡邉、船山、そして渥美。8分遅れで苦しそうな石川、そして13分遅れで奈良と斎藤が続いている。
淡々と走るいつものトップグループだったが、渥美だけは周囲のペースに同調せず、ただひたすら前へ、前への走りを続ける。大弛峠の登り序盤、またも白石、渡邉、船山を置いて懸命のアタックを試みる渥美。そのギリギリの走りにカメラを持つスタッフも興奮。しかし、余力のある3名は渥美を難なく吸収。さらに渥美はその後、スローパンクしていた事に気付き、代輪との交換後は独走を強いられることになった。
渥美が去り、いよいよ3名に絞られたトップ争いは、金峰牧場手前で早くも決定打が放たれた。「カメラが僕らに追いつくのを待ってアタックしようと思ってたんですよ」という白石、渥美のパンク対応を終えたサポートカーが前に上がって来たのを確認した白石は、満を持してアタック!反応しようとする渡邉、船山だったが「もう本当にいっぱいいっぱいだった」という渡邉と、序盤からの石川とのアタックで消耗していた船山は白石に追いすがることは出来なかった。
ラスト8km、MTBが本業である白石は、泥が流れ、石がゴロゴロと転がり、ぬかるみがタイヤにまとわりつくオフロードも難なく通過し、雨がそぼふる大弛を軽快に走り続ける。昨年は、リーダージャージを身に付けた阿部(シマノレーシング)とのラストランだったが、今回は違う。みずからが真っ白のリーダージャージをまとい、独走でツール・ド・信州王者としてひた走っている。ラスト500m、峠の案内看板が見えた。ラスト100m、駐車場が視界に飛び込んできた。「やっと終わった」そんな安堵感と確信していた勝利を手にした自信に満ち溢れた笑顔で白石はフィニッシュを迎えた。
2位は、3つのステージで白石に続く2位となった渡邉が燃え尽きた表情で戦いを終えた。総合における白石とのタイム差9分42秒で総合2位となった渡邉。過去4回この大会に出場した彼は、今回、みずからの最高成績で終えることになった。3位に入った船山は序盤からの逃げを決め、4位以下に差をつけることに成功し総合3位を死守。そしてすべてのチャンスにみずからを懸けた渥美が清清しい表情でフィニッシュ。5位には船山と果敢なアタックを決めた石川が、6位は最後まであきらめない根性の走りを見せた奈良が、7位は奈良と共に峠を走った斎藤が、8位にはパンクの遅れから克服した紫芝が、9位は高橋が、10位は前年の27位からめざましく躍進した川嵜が入り、11位にはスタートアタックで場を盛り上げた金森が、そして、12位、13位の柴田、高坂は同じチームの仲間同士、完走を称えあい、手を取り合って笑顔でフィニッシュ。雨の大弛に歓声と拍手が沸き上がった一瞬だった。また、一昨年の大会で最も長く信州を走った寺島(坂バカ日誌)が20位となり、総合成績では15位という大躍進を果たし、感動的なフィニッシュを迎えた。
閉会式会場の金峰牧場に下り、帰り支度を整えた選手、スタッフらは、表彰式や全員の写真撮影で盛り上がり、大会はなごやかなムードのまま幕を閉じた。冷たい雨のなか、凍える体をふるわせながら走った選手、ずぶぬれになりながら声援を送り、彼らの走りを支えたスタッフ達。58名がそれぞれの峠を登り、2003年夏の思い出を手に入れた。
ツール・ド・信州2003は、多くの支援者の手により、ここに新しい物語を残して終了した。
【各賞】
個人総合優勝:賞金5万円(北浦・近藤賞)、フェスティナウォッチ(近藤賞)
白石真吾(シマノドリンキング)
第2位:賞品(実行委員会)、商品券1万円分(山本ファミリー賞)
渡邉哲平(ナカガワAS・K'デザイン)
第3位:賞品(実行委員会)、賞品券5千円分(山本ファミリー賞)
船山崇(昭和大学自転車競技同好会)
敢闘賞(1):賞品(実行委員会)、図書券1万円分(山本ファミリー賞)
渥美守弘(SPADE・ACE)
敢闘賞(2):図書券1万円分(山本ファミリー賞)
寺島浩樹(坂バカ日誌)
チーム第1位:ビール券(TEAM GIRO賞)、チューブ1年分(竹村賞)
KUCC
チーム第2位:サイクルパーツ(竹村賞)
TEAM GIRO
チーム第3位:サイクルパーツ(竹村賞)
京都大学自転車競技部
第1ステージアタック賞:サイクルグッズ(山岸賞)
山本貴士(京都大学自転車競技部)
第2ステージアタック賞:サイクルグッズ(山岸賞)
渡邉哲平(ナカガワAS・K'デザイン)
第3ステージアタック賞:サイクルグッズ(山岸賞)
柳井成仁(大阪大学自転車競技部)、金森修一(パナソニック)、栫井大地(大阪大学OB)
第4ステージアタック賞:サイクルグッズ(山岸賞)
石川博康(東京工業大学サイクリング部)
☆他にも毎日のステージ1位から3位その他に「矢澤賞」(賞金5千円&サイクルグッズ)が、ブービー賞に「サイクルハウスイシダ賞」(サイクルグッズ)が、第4ステージの特別賞として「桜井賞」(お菓子)が選手らに贈られました。スポンサーの皆様、本当にありがとうございました。