1st STAGE - 8/12 Thu.
佐久市-大河原峠-ビーナスライン-武石峠-王ヶ頭 109.5km
猛暑を味方に小嶋、復活!2年ぶりのリーダーに返り咲き
TOUR DE 信州2004開幕! 厳しい暑さが日本列島を襲う2004年、夏。
連日の雨と寒さに悩まされた昨年とはうってかわって、早朝から強い陽射しが照りつける佐久市野沢西。大型店が並ぶ道路沿い、イエローハットに設けられた第1ステージのスタート地点には、続々と参加選手が集まってきた。
前日から宿を取ったチーム、深夜から出発し、夜通しで高速を走ってきたスタッフなど、それぞれのスタイルで始まりの地にやってきた。これから始まる過酷な大会に対する緊張感と、年に一度の山岳の祭典にやってきた高揚感で、会場は独特の雰囲気に包まれている。
今年のツール・ド・信州は、昨年まで初日におこなわれていたプロローグが主催者都合により開催されず、個人ロードレースの第1ステージを皮切りに第4ステージまで4日間かけて開催するという、変則的なスケジュールだ。浅間山と蓼科山をのぞむ佐久をスタートし、風光明媚なビーナスライン、美ヶ原を走る第1ステージ、白樺峠から夏のヒルクライマーのメッカ・乗鞍岳を登る第2ステージ、一転してマニアックな小刻みの峠を繰り返し、これまで数々の参加選手を驚愕させてきた船山をゴールとする渋めの第3ステージ、そして、鈴蘭高原から濁河峠、そして大会が初めて挑む御岳を擁する第4ステージ。こうしたバラエティに富んだコースレイアウトが設定された。
午前7時、待ち受けていた選手達の前でスタッフが店開きをし、受付開始。毎年恒例の黒い参加賞Tシャツと、スタッフ手作りのゼッケンが渡され、オーガナイザーによる諸注意があった後、選手らはレーサージャージへと着替え、アップに入り始めた。
8時30分、先行のオフィシャルカーが慌しく駐車場を出たその1分後、クラッカーの音と共に選手がスタート。キャラバンがいよいよ出発だ。選手団の前方には、昨年の覇者である白石(シマノドリンキング)が輝かしいゼッケン1番を配した真っ白のリーダージャージを身にまとい中央に位置している。 第1ステージのコースは、いきなりカテゴリー超級の大河原峠(標高2085m)への登りで幕を開けた。スタートからえんえん25kmを登らねばならぬ容赦ないコース設定に選手らは集団で談笑する余裕もない。
5km地点、徐々に遅れ選手が出始め、選手団は長い長い列が早くも分断し始めている。メイン集団は20数名。白石擁するシマノドリンキングを始め、2001年の優勝から信州をあとにするも、今年遂に大会への復帰を果たした小嶋も前方にいる。長らく京都大学自転車競技部のエースとして名をしらしめていた小嶋は、今年からチームミヤタのジャージで出走だ。チームメイトの加藤も前に位置。昨年から信州に参加し存在感を放つHOT STAFFの奈良、高坂、柴田、谷らの姿も見える。
序盤、高坂(HOT STAFF)、井上(スバルスバラースバレスト)がアタックをかけ、集団にカツを入れる。笹井(bicinoko.com)、関根(TEAM GIRO Cannondale)や高梨(なるしまフレンド)、高橋(京大競技部)も果敢に出ているが決定打ではない。
6km地点を通過した時点で(まだ6kmなのに!)、白石(シマノドリンキング)、高梨(なるしまフレンド)、小嶋(チームミヤタ)が集団に若干差をつけ前へ。メイン集団に必死でくらいつこうと頑張っているのは、今年で2度目参加の山崎(坂バカ日誌)、加藤(チームミヤタ)、岩橋(ユキリン)、渥美(SPADE ACE)ら。
10kmを経過し、前方集団は13名ほどに絞られた。あまりに早い展開にスタッフも唖然とするほどだ。ここに、FUNRIDEのDVD映像取材班もヘッドカメラ付きの自走で加わり、あたってくだけろの取材を展開(10月号に乞うご期待!)。
前方では、2年ぶりに王者復活をかけた小嶋の動きがにわかに激しくなってきた。白石と小嶋はぴったりと互いをマークし合い、そこだけ異様なムードが漂っている。 他人と走るのが嫌いと自他共に認める小嶋。いよいよアタック攻勢に突入した。勢いよく仕掛ける小嶋、それにしっかりとチェックを入れる白石。なかなか小嶋のアタックは決まらない。 13km地点、登り途中ながらやや勾配が緩やかになったところで、またも小嶋がスパート!今度こそ、の強烈な小嶋の猛勢に白石は「これ以上相手にできない」といった面持ちでとうとう小嶋に行かせてしまった。
一方、今年から完全復活をかけて猛練習を重ねてきた小嶋の勢いは止まらない。20km地点になると後を追う関根、高梨らを一気に引き離し独走態勢を確立。そのままひとつめの大河原峠をトップ通過。熱いぜコジマ!
大河原峠
小嶋---高坂、関根(+4m)--奈良、白石、高梨(5m30s)---砂原--柴田--高橋(京大)---谷---加藤、笹井、木下---田力
2位争いの面子も熱い。昨年に引き続き出場の高坂とサポートの熱い応援に支えられた関根が登場。2位通過は高坂に。そして、昨年より上位を狙い調子を上げてきた奈良が白石との4位争いを制して通過。
高原らしい強い陽射しが照りつけるなか、気温はどんどん上がってきた。車が渋滞する霧ケ峰から美ヶ原にかけて、小嶋は5回以上もオフィシャルカーに声をかけて補給を要求。その多くが水だった。しかしペースはとどまることなく、ぐいぐいと力強いぺダリングでひた走り、54km地点の霧ケ峰チェックポイントもゆうゆうと通過。標高1957m、天上の遊歩道、美ヶ原の山岳ポイントも先頭で独走。 後方では、小嶋のアタックを許した白石が、まさかの後退。前週まで海外出張していた疲れも見られる白石。「今日は調子が悪い」と冷静に判断したようだ。7番手まで後ろにつけ、美ヶ原までの登りでようやくコーラを所望し、淡々と走り続けている。
チェックポイントでは、2位以降の6人がひとかたまりとなって入ってきた。そこを白石は足を付けることもなくスルーしていく。いよいよ追走か、と思いきや、追い付いてきた5名に先行させてしまった。一方で奈良、高梨、砂原、高坂、関根らは抜きつ追われつしながらも互いの視界に見える範囲で着実に美ヶ原に向かって登り続けている。
ちなみに小嶋に続く奈良の快進撃に加え、信州の新しいキャストとして頭角を表したのが、関西からやってきた砂原(ツーバイツーレーシング)だ。今年はBR-1選手やMTBエリート選手らが名を連ねるなか、未登録ながら着々と先行し始め、美ヶ原を通過する頃には3番手まで踊り出た。
美ヶ原
小嶋---奈良(+12m)---砂原---高坂---関根---高梨---白石---高橋(京大)---笹井(+24m)
美ヶ原から一気に標高800mほどを駆け下り、クライマックスは武石峠から王ケ頭だ。もはや小嶋の敵は誰ひとりおらず、ただひたすらに最初のゴール目指してひた走るだけ。2位との差は17分を超えた。後方を振り返ることもなく、復活したおのれの走りを確かめるように王ケ頭の見晴らしの良い登りをひた走り、安堵感と喜びに満ちた笑顔でフィニッシュ。2004年のツール・ド・信州第1ステージの勝利をもぎ取った。
続いて、「序盤の辛さにどうしようか、と思った」という奈良だったが、後半の力強い走りは最後までたれることなく、歓喜にあふれた表情で2位フィニッシュ。2年目の信州で、磨きのかかった姿を見せつけた。
そして3位には、初参加、しかも未登録選手としてずば抜けた走りを見せた砂原が入ってきた。続いて心強いチームサポートの声援を受けながら関根、2年目の高坂、初参加の高梨が。そして昨年の覇者、白石が7位で静かにフィニッシュ。
「明日からもどんどん前に出る走りで行きます」と小嶋。一転して追う立場になった白石、調子をあげる奈良、砂原らの追い上げはどこまで小嶋に及ぶのか。
初日は、DNSの二人をのぞく49名全員が完走。
明日、第2ステージはオフィシャルカーさえ入ることのできない乗鞍を擁するダイナミックなコースに選手は挑む。