2nd STAGE - 8/13 Fri.
奈川-白樺峠-乗蔵岳-平湯峠-日影平山 100.3km
小嶋強し!乗鞍を制し、リーダージャージをキープ。激しい上位の攻防から目が離せない!
松本市街を見下ろす研修施設・松本青年の家で目覚めた77名の選手、チームサポート、オフィシャルスタッフと1匹の犬。寒いほどひんやりとした朝の空気が宿舎を覆っている。
スタート時間の早さに備え、4時過ぎから起き出している選手もいる。宿舎を出発する時間は6時。その前に、宿泊料金格安の青年の家を利用する者に義務付けられた「朝のお掃除」をこなさねばならない。レーサージャージで掃除機をかける選手、準備に追われながらトイレに水をまくオーガナイザーなど、あわただしい風景の中、大会2日目は始まった。
ツール・ド・信州2004の第2ステージは、奈川村の公営駐車場をスタートし、カテゴリー2級の白樺峠(標高1625m)を経て、カテゴリー超級、乗鞍岳(標高2720m)、チェックポイントの平湯峠まで一気に駆け下り、高山市を一瞬かすめ、乗鞍岳の裾野に位置する日影平山(カテゴリー1級、標高1507m)にフィニッシュする100.3kmである。
この日最大のハイライトである乗鞍岳は、今年から一般車輌乗り入れ禁止になっている。そのため、乗鞍登坂区間は選手は補給無しのリスクを負わされる。
そして、あなどれないのがラストの無名な山、日影平山だ。国立乗鞍青年の家だけがそびえる頂上までの坂は、登るほど勾配がきつくなる選手泣かせの坂。平均8%はゆうに超えるであろう後半の坂に「予想外にきつい」とうなる選手が続出した。
宿舎から自転車を車輌に積み、一路キャラバンは国道158号線を西へ走り奈川村駐車場へ。限りある時間をフル活用し、7時40分、選手団はコースへと吸い込まれていった。
都合により2日目から参加した選手を含め、出走者は51名。フル参加でのスタートだ。
スタート直後だからといって、集団のペースが緩やかなはずもなく、今日も「かこい賞」(ひとつめの峠トップ通過者に賞金2千円)を目指して若手を中心とする選手が勢いよく前に飛び出している。 その中心は京都大学勢だ。松井(KUCC)、高橋(京大自転車競技部)、木下(京大自転車競技部)らが元気に前に出て、彼らと共にリーダージャージの小嶋(チームミヤタ)、白石(シマノドリンキング)、高梨(なるしまフレンド)も前に位置している。
しかし若手の飛び出しを機にエンジンがかかった小嶋が容赦なく攻撃態勢に突入。「なんせ旅費を稼がなきゃなんないですからね」とジョークを飛ばしながらも、ライバル白石の猛追を封じ込めようとするかのように前に出る。
白樺峠が残り3kmにせまる。先頭は小嶋、白石、高橋の3名。後ろを9名が追う。小嶋が飛び出し、高橋がそれに反応。10mほど白石が遅れるも、また3名に戻る。その後ろには高坂(HOT STAFF)、木下(京大競技部)が100mほど遅れて追走している。
残り2km、小嶋が再び飛び出した。これに高橋が反応するも白石は見送ってそのまま。しかし先行した小嶋も2人の視界から外れることはなく、意外と長い残りの道のりに若干たれてしまう。それを見据えた白石が後方からペースアップ、また合流かと思いきや、後ろを振り返って白石を確認した小嶋が力を振り絞ってスパート。結局、小嶋トップ通過、白石と高橋がスプリントをする形で下りに入った。
白樺峠
小嶋---高橋、白石(+30秒)---奈良、関根(TEAM GIRO)、高坂、木下---松井---岩橋(ユキリン)、笹井(bicinoko.com)、砂原(ツーバイツー)、柴田(HOT STAFF)、矢澤(BIKE SHOP SPACE)、紫芝(Verdad)、井上(スバルスバラースバレスト)
緑美しい白樺峠からの下りを疾走し、一般の人々で賑わう駐車場や観光案内所をかわし(大応援団も出現!)、選手らは一路、乗鞍を目指す。
白樺からの下りで白石と小嶋は一緒になり、2名で乗鞍に突入。1分ほど開いて高橋(京大競技部)、さらに1分開いて関根、しばらく開いて高坂、木下、奈良が通過。奈良は総合順位で争う後方の砂原の様子を気にかけ、4分差と聞き安心した様子でぐいぐい前に行く。
車輌通行止めギリギリの地点で最後の補給をおこない、ボトルをフルに満たしていよいよ長い登坂が始まった。ここで柴田がシマノ10Sの後輪をパンクし、交換のための痛いタイムロスを強いられてしまう。
最大のスポットでライバルが一騎打ち、という形になった。登り始めてしばらくの間は、白石、小嶋共に互いをチェックし合いながらの並走。
勝負が決まったのは、途中、傾斜がゆるやかになった箇所でのこと。「平坦っぽいところで一気に出ようと、満を持してスパート」した小嶋が、一発で白石を引き離し、そのまま距離を大きく広げて乗鞍の頂点をゲット。
乗鞍
小嶋---白石---奈良、高坂、高橋、木下--関根-高梨
2位で下り始めた白石は、後ろから来た高橋、木下、高坂、奈良に吸収され、5名のまま平湯峠のチェックポイントに下りて来た。
「すごい下りですね!さあ、行きますよ~」。取るものもとりあえず、白石が周囲をうながし、5名はあたふたと出発。それもそのはず。小嶋と白石の差はチェックポイントの時点で8分まで開いていた。 一路、高山へと向かう下り。強烈な向かい風が選手を襲うなか、高坂が積極的に前を引き、5名は調子よくペースを上げるが、不運にも奈良が一般車輌にはさまれてしまい遅れを喫してしまった。その後、高山に入ってからの登りで、消耗したのか、高坂が後退。さらに後方では関根が猛烈な速さで単独の猛追をするが、前の数名には追い付けないまま最後の高山を通過。
日影平山の登りに小嶋が突入した。猛烈な陽射し、上昇する気温をも味方につけるように小嶋は力強く登り続けている。2位争いは、どうやら白石、木下、高橋の3名に絞られたようだ。続いて5位集団は、車輌に阻まれるも必死で追い上げた奈良、しばらく置いて高坂、そしてそれを追う関根。それぞれに厳しい勾配に辛い表情を見せている。さらに後ろは高梨(なるしまフレンド)、岩橋(ユキリン)が続き、紫芝、柴田、笹井、砂原が続く。第1ステージ3位の砂原は、前日の疲労がたたってしまったようだ。
ラスト3km、小嶋と白石のタイム差は5分15秒まで開いた。後ろを木下が先輩を引き離して「BR1に昇格したてですし、一度は3位に入りますよ!」と必死の走り。さらに奈良、高坂と続いていたが、チームメートの手厚いサポートと華やかな声援を受けた関根が遂にラストで2名にせまった。最後の最後に関根は奈良と高坂を追い抜き、5位に。さらに奈良と高坂の位置関係も入れ替わり、高坂が6位に浮上した。
「コースアウト!」小嶋がフィニッシュまであと500mの地点で青年の家に向かう道から外れてしまった。行き止まりになってコース復帰するのに2~3分タイムロスしてしまい、最後の最後で緊迫感が走る。しかし白石との差はまだ2分あった。
懸命のラストスパートをかけた小嶋。白石がせまる恐怖を振り払うかのように、最後の激坂をかけのぼって、アスファルトに貼られた真っ白のテープが陽光できらめくゴールに今日も一番で飛び込んできた。
そして2位には「今年の信州は厳しい!序盤からボンボン飛び出してハードすぎる」という白石が、これまでになく厳しい表情でフィニッシュ。最終的に小嶋とのタイム差は2分14秒だった。総合では30分の差となった。
3位は過去最高順位で大健闘の木下が入賞。4位は先輩の高橋、5位はラストの追い上げが光った関根、6位高坂、7位は奈良となった。奈良は前日のステージ2位からは後退したものの、総合順位では2位をキープ。3位の関根との差は1分半という僅差。明日からの戦いからも目が離せない。 第3ステージの明日は、ひるがの高原から船山を目指す133.4km。今大会、最長のコースとなる。