3rd STAGE - 8/15 Mon.
8/15 Mon.
茅野-麦草峠-川上村-信州峠-クリスタルライン-みずがき山-木賊峠-乙女高原-大弛峠 123km
大会4日目、キャラバンは県境を越え山梨へ! 小嶋(Team-Comrade.com)、白石をおさえリーダーを守り抜く!
茅野市の国道152号ぞいの宿舎で目を覚ました選手たち。幸いなことに雨という天気予報は外れ、雲の向こうに爽やかな夏空が広がっている。
ツール・ド・信州2005は早くも大会4日目、第3ステージの朝を迎えた。初日の悪路による落車や慣れない山岳ステージで、体にダメージを抱える選手も増えてきた。前日、腰痛などでリタイヤした2名を含む合計4名が朝から欠場の旨をオフィシャルに伝え、選手は70名へと減った。しかし前日の落車で欠場をにおわせていた白石(シマノドリンキング)は、打撲した手の痛みを乗り越え元気に出走準備をおこない周囲をほっとさせた。
静岡県磐田市で迎えた初日から徐々に北上してきたキャラバン。ようやく茅野市にやってきたわけだが、ここで方角を東へとかえ、一路山梨県を目指す。茅野から麦草峠を越えて、松原湖畔をすり抜け小海からは大会おなじみのクリスタルラインを通過、山梨県に入り大弛峠のゴールを目指す。
ちなみに例年はクリスタルライン通過して大弛峠へ至る際には、わざわざ牧丘の町までくだって選手のブーイングをかっていたが、今回は序盤にカテゴリー1級の麦草を通るためにショートカットコースを取る。
それにしても、ゴールまでに麦草、大蔵、信州、みずがき、木賊(とくさ)、乙女、大弛と7箇所もの峠を通るこの日のコース、7つの峠のうち6つが山岳ポイントであり、本大会で最もアップダウンの激しいレイアウトとなっている。122kmの間、たたみかけてくる峠に挑むモチベーションとパワー、スタミナをどれだけ発揮できるか、リーダーの小嶋と後を追う選手らの攻防が楽しみだ。
午前7時、70名の選手が定刻通り宿舎前の駐車場をスタート。まずは標高差1250mの麦草峠を目指しひた走る。スタートから2kmを経てパレードが解除。いきなりリーダーを擁するTeam-Comrade.comの秋山と木下、さらに山本(京大自転車競技部)らがアタックするが信号でつかまってしまう。
5km地点では山崎(坂バカ日誌)が飛び出し、一気に集団から10m以上前に出る。山崎はサポートに駆けつけたメンバーやHPのレポートを楽しみにする仲間らの期待に応えるかのようだ。山崎はしばらく集団を引き続け、これまでにない果敢な走りをアピールした。
さらに2001年、この峠で小嶋を倒したことのある山根(TeamYOUCANスペシャライズド)も4年前を彷彿とさせる走りで前に出る。小嶋(Team-Comrade.com)も彼らをチェックするためペースを速め、一気に後続の集団は一列棒状に伸びていく。小嶋の背後にはしっかりと白石(シマノドリンキング)が位置している。
市街地が終わって徐々に高原野菜が広がる地域に入り、緩やかな登りが始まった。12km地点を過ぎ、傾斜がきつくなって山道に差し掛かってきたところで山根がスパートをかけ始める。続いて高梨(なるしまフレンド)がキレのいいカウンターアタック、これに小嶋が反応し、一気に前方集団の緊迫度が高まっていく。
13km地点、トップグループは高梨、小嶋、山根、白石、田端の5名に絞られた。そこから30秒差で奈良(HOT STAFF)、木下の2名、やや開いて春原(シマノドリンキング)、山本(チームニルス)、秋山、さらに山崎が続く。
別荘地域が点在し始め、標高はどんどん上がっていく。峠まで残り10kmを切った17km地点で、さらにめまぐるしいかけあいが展開!高梨(なるしまフレンド)がクライマーの本領発揮で果敢に前に出て独走、それに反応する山根、様子をうかがいながらも離れることのない小嶋、白石と田端。今度は18kmの若干ゆるやかになった傾斜で小嶋がアタック!白石が反応、19kmで山根アタック、今度は田端が反応。とにもかくにも序盤から息をつかせぬアタックの応酬だ。しかしどれも決定打には至らず5名のままの状態が続く。時計はまだ7時50分。
最初の積極走行で消耗した高梨や山根が辛そうに遅れ始めた。前方では小嶋が出るが白石のチェックが続く。そんななか田端も苦しい走りになってきた。
峠まで残り2kmを切り、傾斜が急になってきたところで白石が遂に自分から戦いの火蓋を切った。自分から仕掛けたこの日最初のアタックで小嶋に一撃を与えた白石は、そのまま小嶋をぐいぐい引き離して麦草峠のトップ通過をものにした。3位通過は田端、遅れて高梨、そして高梨と山根をつかまえた奈良が峠通過。山崎が続く。
26.7km・麦草峠
白石--小嶋----田端---高梨、奈良、山根----山崎--紫芝(Verdad)、遠藤(BM SPACE)---安堵(キャノンBBTプリンス)---
麦草を下り始め、白石に小嶋と田端がひっついた。さらに背後から高梨、奈良、山根が合流。トップグループが6名になり、そのまま松原湖から小海に下り、野辺山方面へとひた走る。まだ峠は6つ残っている。
トップ6名は麦草峠のバトルの緊張がとけたのか、麦草からの長い下りを終えた後は、国道から次の山道まではお喋りしながらのサイクリング状態で走行。そのままふたつめの大蔵山(59.2km地点)を全員でパスしていった。
しかしそんなひとときは束の間、信州峠へ向かう見晴らしのよい農村地帯にさしかかった66km地点で小嶋がスパート!そのまま峠に入るが小嶋の勢いはとどまらず、猛追する白石も今度は小嶋に追い付く事ができそうにない。みるみる小嶋が白石以下5名を引き離して20秒のリードで信州峠をトップ通過した。白石からは1分後に奈良、田端、山根が三つ巴で、25秒遅れで高梨が続く。
70km・信州峠
小嶋---白石(20s+TOP)---奈良、田端、山根(1m20s+TOP)
---高梨(1m45s+TOP)---都築、遠藤、安堵---杉山---山本、春原---山崎--
日差しが強くなり、気温はどんどん上がっていき、補給のドリンクは水を中心にあっというまにボトルが空になっていく。暑さにはめっぽう強い小嶋、みずがき、木賊(とくさ)峠もそのまま力強い独走で通過。その一方で下りには細心の注意を払う小嶋は慎重に木賊からの下りをクリアしていき、悪路のクリスタルラインを着実に前進して5つ目の乙女高原も単独トップ通過した。
小嶋を単独で追っていた白石、みずがきで1分40秒差を付けられ、なかなか小嶋との差はつまらない。やがて白石は田端と合流。続いて、奈良と高梨がセットになってクリスタルラインを走行していく。前日のステージまではパンクや落車続きでなかなか活躍できなかった奈良も目覚ましい走りを見せている。普段も近所に住んでいて気心の知れた者同士という高梨と共に4位グループをキープしている。
後方では、狭く細かなコーナーが繰り返す木賊峠からの下り、与田(Blanche&SERENO)が対向車と衝突し、怪我を負って病院に搬送されるという事故が起こってしまった。オフィシャルとチームサポートカーが対応をおこない、大会は続行された。
乙女高原を越え、距離にしてすでに103.6km地点を通過。残るは標高2400mにせまる大弛峠までの20kmとなった。無理のないスピードでパンクもなく着実に下り終えた小嶋が107km地点の金峰牧場のロッジ前を通過。後はところどころにダートのある峠までの鬱蒼とした山道をひたすら登るのみ。小嶋のサポートには自チームのTeam-Comrade.comがしっかりと後に付き、飲料や食料補給に余念がない。そんな安心が心の支えにもなったのか、わずかずつ白石との差を開けながら、最後の峠を登っていく。
金峰牧場あたりでは小嶋と白石との差は約3分。白石の後ろには同じく3分後に田端が追っている。と、そこへ高梨を置いて単独で前に出た奈良が「視界に(田端が)入ってきた」と言うほどまで近づいたものの、順位がくつがえるには至らなかった。その後ろには序盤の走りが光った高梨が疲れた表情を見せながらも渾身の走り。もう大弛の後半には上位もバラバラになって耐久ラン状態となってしまった。
標高が上がるにつれ気温が下がってきた。最後のコーナーを曲がり、小嶋がガッツポーズを見せ12時24分5秒にゴール。スタートから5時間24分。小嶋から5分59秒後、最初の麦草で怒涛の小嶋のアタックをおさえ、一撃でしとめた白石が天空を指差し充実の表情でフィニッシュ!リーダーは逃したものの、山岳ポイントでは依然として白石がトップを守り抜いた。
キャラバンは山梨県甲府市で一夜を明かし、明日、最終日の第4ステージを迎える。目指すは富士山。ステージのフィニッシュを最初に飾るのは誰か、リーダージャージの行方に目が離せない。