4th STAGE - 8/15 Wed.
8/15 Wed.
青木村 - 修那羅峠 - 聖山 - 信州新町 - 小川村 - 鬼無里 - 白馬 - 八方尾根 107.1km
クライマー・田端(spacebikes.com)、ステージ全峠を制覇! リーダージャージは小嶋、団体総合はCOMRADEに輝く
8月11日から旅を始めたキャラバンも、いよいよ最終日を迎える。第4ステージは上田市から一路、ロードレースで有名な小川村から旧鬼無里村を抜け、大会初のゴール地、白馬の八方尾根を目指す109km。距離は短いものの、田園風景の山間部で細かく通津kアップダウンと4つの峠が選手を待ちうけ、気を抜く場所が無いコースだ。
午前7時のスタート直後から、川崎(ナカガワAS K'デザイン)、田端(spacebikes.com)が前に出て、ひとつ目の修那羅峠を目指し、スピードを上げていく。
田端の勢いに若干遅れを取る川崎。それを見たチームメイトの渡邉が、前に出て田端とのランデブーに合流。「川崎を最初にアタックさせるのが作戦だったが、ここで遅れたら台無しになる。ならば自分も」と判断して前に出た。修那羅峠では「この峠はかつて走ったことがあるから読めていた」田端が難なくトップ通過。30秒遅れて渡邉、川崎が通過し、田畑とはまた下りで一緒になり、疾走していく。
修那羅峠からを下って平坦路を進むトップ3名の後方では、リーダーの小嶋(TEAM COMRADE GIANT)、レイノルズ(ねこのじてんしゃ屋さん)、関根(spacebikes.com)、小原(ナカガワAS K'デザイン)、稲益(TEAM COMRADE GIANT)ら5人が追走集団を作り、前にせまろうとスピードを上げる。そんななか、トップ3名は運悪く踏み切りで立ち往生させられ、ようやく彼らが立ち去った直後に追走集団がやってきた。運営側の判断で、UCI規則にのっとりトップが待った時間分を後ろの集団にも停止させ、前後の集団はその差1分をキープしたまま戦いを再開させた。
スタートから20km、のどかな田園地帯を軽快に進む渡邉、川崎、田端らは、平地に強く集団走行に慣れたナカガワの2人を中心に、順調にローテーションを続けていく。後方では小嶋らの5人グループに渋谷(TEAM COMRADE GIANT)、畑中(TEAM COMRADE GIANT)、入江(シマノドリンキング)が追い付き8人へとふくらんだ。追走集団にはCOMRADEのメンバー全員が含まれる形となり、トップとの距離も縮まるかと予想されたが、効率よく回す前の3人に対し、「ザックと自分が前を引く格好だったが、集団的にうまくローテーションできずスピードが上がらず」(小嶋)なかなか差がつめられない。結果、徐々にトップと後方8人との差は広がり始め、さらに40km地点の県道で稲益がパンク。何とかすぐ後方にいたCOMRADEのサポートにより代輪交換を済ませ、心配そうに振り返りながら様子をうかがう小嶋のもとへ懸命に追い付いた。
ふたつめの峠、信州新町-小川村境でも疲労を全く感じさせない田端が難なくトップ通過し、渡邉、川崎と共に下っていく。峠での小嶋ら後方との差は3分30秒。小川村に入り、いよいよしびれを切らせた小嶋がスピードアップ、それに関根、レイノルズ、稲益の3人が付いていき、追走集団は分裂し始めた。総合3位のナカガワ・小原は、苦しい表情で徐々に遅れを取っていく。
スピードを上げて追走する小嶋は3つめの峠、小川村-鬼無里境の峠でも果敢に前に出て、3名との差を2分差につめる。必死で小嶋に付いてきた稲益は、パンクの影響もあってか徐々に関根、ザックから遅れてしまうが、鬼無里から白馬へと越える4つめの峠までの区間で「ここで遅れたら緩い傾斜でどんどん離れてしまう」と底力を振り絞って小嶋らに追い付いた。一方で関根が小嶋らから遅れをとっていく。その前方では、あいかわらず田端、渡邉、川崎が先行するが、鬼無里の田園地帯で川崎の表情が徐々にゆがみ始め、部分的に遅れがちになりながらも必死で二人に付いていく限界の走りを見せていた。
白馬村の市街が近付いてきた。ここを抜けるといよいよ最後の登り、八方尾根ゲレンデに突入する。緩やかな登りでトップ3名から川崎が徐々に遅れ始める。後方では小嶋、ザック、稲益が距離をつめてきた。白馬駅前付近に差し掛かってきた時には「小嶋の姿が見えた」(田端)。小嶋もナカガワのピンクジャージを目撃するも、信号に阻まれた。さらにサポートカーと出会えなかったことで脱水症状に襲われ、稲益からコーラを受け取るも徐々に失速してしまう。
八方尾根の登り手前にあるペンション街、すでに川崎は完全に2人から離れてしまい、後は田端と渡邉の一騎打ちとなった。「坂が緩いうちに田端を引き離したかった」渡邉だったが、田端は切れるどころか本格的な登りに入り傾斜が激しくなったところで、本領発揮し、徐々に渡邉を引き離していく。その後方ではレイノルズが淡々と踏み続けており、4番手には非常に苦しい展開を強いられた小嶋、その後方には稲益が続く。そして、田端、渡邉に食らい付いていた川崎が重い足どりながら必死で登り続けている。
眼下に絶景が広がる八方尾根のゲレンデ。田端と渡邉は互いの姿が見える距離で登り続ける。観光客で賑わうゴール地点の駐車場がせまってきた。もはや表情が無くなるほど困ぱいしていた田端が遂に初めてのステージ優勝とこの日の全ての峠を制して白いゴールラインにたどりついた。そして、先輩の小嶋を初めて倒した渡邉が、47秒遅れて2位でゴール。続いて1分後にレイノルズが、31秒後に小嶋が入り、厳しいステージながらも総合タイムでは難なくリーダージャージを守り抜き、10年目の信州の王者に輝いた。続いて「とにかくチーム総合のために」最後の力を振り絞った稲益と、同じく打倒COMRADEのために働きに働いた川崎がフィニッシュ。7位に関根、8位畑中、9位に入江、そして10位に小原が入り、長い戦いを終えた。
1プロローグ4ステージ、5日間に渡って繰り広げられたツール・ド・信州2007。今年は小嶋を擁するTEAM COMRADE GIANTとベテラン渡邉が率いるナカガワAS K'デザインによる激しいチーム同士の戦いに、クライマー・田端(spacebikes.com)の果敢な挑戦がからみ合い、かつてない様々な展開と出来事が大会を盛り上げた。連日の容赦ない暑さと困難なコースと戦った43人のクライマー達、彼らを支えたチームサポート、オフィシャルスタッフと共に笑顔で閉会式を迎え、それぞれの帰路に着いた。
小嶋(TEAM COMRADE GIANT)
追走中の踏切での停止や、稲益のパンクなど、今日はあまり運がなかった。白馬の市街で前を行く渡邉のジャージを見たが、ここも信号で引っかかって、離れてしまった。その後に脱水症状に襲われた。最後は水をもらってから稲益を抜いて登り切った。そんな風に、今日は非常に苦しいレース展開だった。まあでも、チーム総合1位は取れたんで良かった。楽しかったですよ!
稲益(TEAM COMRADE GIANT)
とりあえずチーム賞を逃したら小嶋に殺されそうだったから、ナカガワの小原か渡邉のどちらか後ろのほうに付いていけるところまで付いていこうと走っていた。意外にも小原は小川村の登りでしんどそうだったからマークするのをやめた。一旦は小嶋やザックから遅れたが、遅れたまま下ったら緩い峠でさらに離されると思って、無理して前に追い付いた。それが良かった。追い付くのに力を使ったから、後はとにかく走るだけ。白馬の街中で遅れた小嶋にコーラを渡して、あとは八方を目指した。川崎より順位を上げられなかったけど、僕の使命はチーム総合を狙うことでしたから、よしとします。
田端(spacebikes.com)
平地で後続に追いつかれるかと思ったけど、渡邉、川崎のナカガワ勢とは本当にいいペースで回すことができた。理想的なメンバーだった。COMRADEとのチーム戦にうまい具合にのらせてもらった。ナカガワさまさまですよ(笑)。終盤、小嶋が近付いてるといわれて、それこそ白馬駅で姿が見えたから「いつもの展開になってしまうか」と思ってヒヤヒヤした。最後の八方の坂も渡邉がいいペースで走っていて「これで2位だったらつまらないな」と思って、最後は視界に星が見えて意識を失うぐらい頑張った。あと1km長かったら倒れていたと思う。今年の信州は、ザックやナカガワの新規参入組が凄かった。本当はspaceの佐藤店長から総合優勝しろと言われていたが、初日に脚の痛みで遅れたのが惜しかった。でもこうしてステージと山岳賞をものにできて良かった。
渡邉(ナカガワAS K'デザイン)
川崎に最初行かせたのは作戦。その後、僕と小原は集団にちゃんといて総合上位を狙おう、という計画だった。川崎と田端が最初行ったから様子を見ていたが、川崎が切れて、田端との総合差も気にしていたので「これは自分が行かないと」と思って追いかけた。コース的に3人のほうがいいと判断して、下りはなるべく僕が引いた。田端はやっぱり登りで速いから、川崎には無理させず、でもちぎれないように声をかけてやった。どこまで持つかと思ったけど、よく付いてきてた。小原の調子が悪かったのが残念。あの展開は超有利だったから。昨日全然飯を食えてないので、がんばってお茶漬け食わせたんですけどね。チーム総合は持っていかれたけど、今日、小嶋に勝てたことが本当に嬉しい。社会人3年目になって、普段練習できないから、信州に来てから調子を上げていった。経験を積んで人の動きも見ることができるようになり、自分の走り方が変わってきた。今日は最高のステージでした。
川崎(ナカガワAS K'デザイン)
平地でのローテーションは、いい感じでいけた。稲益がパンクしたのは知らなかった。後半はきつくて何度もちぎれかけたが、昨日に比べて今日はよく走れたと思う。今日はいい仕事ができたかな(「ばっちりじゃん!」と渡邉)。来年も来て、山で活躍したい。