HISOTRY 2002

ツール・ド・信州が見る夢 - 綾野真

<<<<キャファ通信>>>> VOL.1549  2002/09/23 より転載

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########### ツール・ド・信州が見る夢 ######綾野真

そのレースにはスポンサーもない。警察の道路使用許可さえ取得できていな
い。そんなゲリラレースを雑誌に掲載して良いのか?というジレンマさえ常
にあるし、ある輪界人は「そんなことをしても意味がない」と言ったそう
だ。正式でないものは認めない。では「正式」とは・・・?

実際に見に来てみれば、そんな揶揄をすることが、ひどく後ろ向きであるこ
とに恥じ入るはず。そこには情熱や本物を目指す意志がある。なにより確か
な運営能力がある。毎日がツール・ド・フランスの山岳ステージに劣らぬほ
どのレースコースは、国内レースでは類を見ない厳しさ。もちろんコースが
良いからと言って良いレースとは言えないだろう。すぐに分解する集団。ポ
ツポツとほとんどサイクルマラソン風に走る今の状況なら、道路許可が必要
なほどの危険度もない。実際、「レース」になっているのは先頭の3人ほど。
私を含めた後続選手は<個人TT風の山岳ツーリング>の状態だ。

今年は阿部良之選手(シマノレーシング)が参加した。女子ジロ・デ・イタ
リアを完走している関家朋子選手も挑戦した。「このコースで国内トップク
ラスの選手がレースをするとしたら・・・ちょっとゾッとするけど見る側に
したら面白いでしょうね」と阿部選手。運営やコースだけが遙か先を行って
いる状態だが、選手の実力や、運営を支える状況(警察の許可や資金面の協
力など)が追いついたときには、TV放映に値する面白さを持つはずだ。実
際に、オーガナイザーの近藤淳也が目指しているのはそこだ。

では日本のツールと言われるまでに順調に成長していけるのか。その可能性
があるのか?と聞かれれば、今の日本では(おもに警察の許可の面では)、
可能性はゼロに近い。そのことも、運営側は知っている。ではツール・ド・
信州は「見果てぬ夢」なのか・・・。

僕が希望の光を見るのは、参加者と、巣立っていく人間に優秀な人材が多い
こと(反吐がでるほど語弊のある言い方だが・・・)。彼ら卒業生たちが将
来的(10年以上先かもしれないが)に企業や警察を支えたり動かしたりで
きる社会的地位についたときに、このレースのことを思い出し、力を発揮し
たときに、実現に向けたアクションがあるのではないかということ。また、
本物を知る人が、このレースに心を動かされたときに、協力してくれること
も期待したい。致命的に欠けているモノは、このレースの魅力が自然にカ
バーしてくれるものだと思う(思いたい)。

「突拍子もないこと」「想像もつかないこと」ツール・ド・フランスもアイ
アンマン・トライアスロンも、はじめはそう言われたはず。だから(?)、
根っこにデッカイ夢があるなら、大きな樹に成長できるはずだ(と思いたい)。

自転車レースイベントが、数年は好調でも必ず先細りになるのも、そこに感
動させる要素がないから、飽きられる程度のものだから、と言い切ってしま
うのは極端かもしれないけれど・・・。10年後、20年後というスパンで考
えたら、大きく育つのは素性の良いほう、ではないか。

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(綾野真)