間に合わなかったアタック
勝負は5人に絞られていた。1999年全日本選手権。
シマノ阿部・住田、BS藤野・渋谷、EZAK中島の5人の逃げが決まり、
後続とは2分の差が開いていた。
ゴールまであと2周。
後続の集団を撮影しに一旦下がっていた僕は再び先頭の5人のもとへ戻ろうとするが、
狭いコーナーの連続路で思うように集団を抜くことができない。
ようやく誘導灯のストレートで集団をかわし、全速力で前を追う。
12%の登り坂でやっと5人が姿を現した。
とその時、赤いジャージの選手が一人もの凄い勢いで飛び出した。
藤野はこの後渋谷を従え栄光のナショナルチャンピオンに輝く。
「あ、行ったぁー!」と思ったがもう遅かった。
まるでちぎれる選手のように、僕は後ろから藤野の背中を追うだけだった。