桃太郎峠の賭け
この日、道があまりに細いためカメラマンにバイク同乗の許可は下りなかった。
3 DAY CYCLE ROAD 熊野、最終ステージ。
迷いに迷った末、僕はゴールシーンを捨てて最後の峠で選手を待つことにした。
急勾配のこの峠を、初めに登ってきた選手が大会を制すと読んだからである。
降りしきる雨の中、震えながら待つこと1時間。
野寺が中島を従え、もの凄い形相で登ってきた。
激しい野寺のアタックに、辛うじて付いていけたのは中島一人だった。
この後二人は10kmの道を逃げ切り、先頭でゴールした野寺はチャンピオンに輝く。
賭けは当たった。
僕は胸をなで下ろしながら、規制解除の車と共に峠を下りた。