PROLOGUE - 8/13 Wed.
ツール・ド・信州2003開幕!灼熱のプロローグを38名が疾走! 焼けるような暑さを連れて、信州・野沢温泉に全国からサイクリスト達がやってきた
ツール・ド・信州2003。選手40名、スタッフ18名、総勢58名の峠好きが集まった今年のプロローグ会場は、毎年恒例の熱気と緊張感と笑い声で溢れている。8月13日、野沢温泉村でのプロローグ・個人タイムトライアル3kmを皮切りに、この日、ツール・ド・信州は8月17日の最終日まで、数々の峠を越え県境を越え、ラストの山梨県大弛峠までの長い道のりを走る5日間の旅路の幕を切って落とした。
晴れやかな幕開けの日、選手達のお披露目イベントでもあるプロローグが始まった。午後1時過ぎから続々とチームカーが会場に集まってきた。集合地は野沢温泉村役場前駐車場。既にクルマでコースの下見を終えた選手達からは「こんなん登りすぎ!」「TTじゃない!」という悲痛の叫びが聞こえてくる。そう、今日のコースは千曲川から野沢温泉村の中心地へと至る約3kmの登りである。これまでのツール・ド・信州プロローグの中でも抜きん出た勾配の「ヒルクライムTT」だ。右手に学校を見ながら登るラスト数百メートルの簡易舗装は、10%に及ばんばかりの急坂である。試走をする選手の表情も徐々に苦しい様子が浮かんできた。例年になく厳しい今年のプロローグを制すのは誰か?
2時30分、定刻通り船山(昭和大学自転車競技同好会)がスタート。弾けるように灼熱のコースへ飛び出して行った。各自の出走は1分間隔。続いて地元の信州・安曇野からエントリーした新妻(エキップあづみの)が走り出す。地の利を生かした走りができるか?オフロードでも活躍中の金森(パナソニック)も耳のピアスを輝かせながら勢いよくダッシュ!
1番手スタートの船山のタイムが出た。8分41秒。これが後にスタートする選手達の参考タイムとなった。しかし、4番手スタートの渥美(SPADE ACE)が早くも船山のタイムをうわまわる8分28秒をたたき出した。9番手には、現在公開中の「茄子 アンダルシアの夏」監督の高坂(パオパオビール)が出走。もうひとつのツール・ド・信州で連覇を果たしている高坂は「ダブルツールを目指す」と明言。しかし渥美のタイムに6秒及ばず8分34秒フィニッシュとなった。
高坂の後、6人目のスタートの渡邊(ナカガワAS・K'デザイン)が渥美を10秒もうわまわる8分18秒の好タイムを出し、トップへ踊り出た。ちょうど真ん中の出走となる梅津(APEX)がスタートした後、同チームの岡村、佐藤は遅刻のため無念のDNSとなる。サラリーマンレーサーとして今年も参加の松村(京大自転車部OB)、小関(ALPINE)、TEAM GIROの関根、江國、川嵜らが走るが渡邊のタイムはくつがえらない。渋谷(ミノムシ市川)は3秒差という僅差で暫定2位となる。
「あれ、綾野選手がいません!」ツール・ド・フランス帰りの走るカメライター・綾野(チバポンズ)はスタッフがやきもきする中、出走15秒前にやっとこさスタート地点に現れ、「きつい~」と身をよじりながらの走行。3度目のベテラン・紫芝(Verdad)は8分57秒。渡邊を上回ることはできない。
残すところ、KUCC(京大サイクリング部)、京大自転車競技部、大阪大学、シマノドリンキングら常連選手の出走のみとなった。ここで、斎藤が渡邊のタイムを15秒も一気に縮め、トップに駆け上る!しかし遂に高橋(京大競技部)が7分49秒という初の7分台に輝きプロローグ王者に王手をかけた。そして今年の栄えある1番ゼッケンを身につけた白石(シマノドリンキング)が体に水をかけながら焼き付ける太陽の下へ登場。「ええっ、プロローグ優勝賞金、出るんですか?5千円?いきますよ!」そんな彼らしい明るさでコースへ飛び出す。チームメートの岡本をかわし、軽々としたぺダリングでスタッフの声援に笑顔で応えながらフィニッシュを目指す白石。7分台を出した高橋の走りも軽やかだったが、白石も負けてはいない。既にフィニッシュした選手らの歓声を受けながら白石がフィニッシュ!タイムは、7分52秒・・・まさに高橋とは3秒という僅差の2位となった。
「狙っていました・・・ね、なんて!」と照れくさそうに笑う高橋は、8月初旬に京大自転車競技部の合宿を終え、現在のぼり調子のコンディションだという。昨年、阿部(シマノ)や白石(当時阪大)ら実力者にくらいつく走りで新人賞を獲得した高橋。今年は遂にリーダージャージに身を通し、第1ステージに勇姿を見せる。また、夏の始めに全日本MTB選手権U23に優勝し、現在も好調を保っている白石や斎藤、渡邊らとの攻防に注目だ。 第1ステージは野沢温泉をスタートし、奥志賀林道、志賀高原、そして万座峠から一路、渋峠を目指す本大会初のコースである。いよいよ峠での戦いが、明日、幕をあける。