1st STAGE - 8/15 Thu.
阿部良之、貫禄のステージ優勝! 「悪夢の激坂」船山を独走で制す
ツ-ル・ド・信州大会二日目、いよいよ町から町へと大移動するロードマンの闘いが始まった。今日は木曽福島をあとにし地蔵峠、長峰峠、鈴蘭高原から人知れぬ峠・船山を目指す117km。ダイナミックではないもののそれぞれに厳しい4つの峠を越えラストは最高傾斜は十数パーセントをゆうに越す船山へと挑むハードコースである。とりわけ船山においては、通常は電力会社の設備があるだけの全く人通りのない無名の峠だが、信州では誰もが怖れるクライマックスの舞台だ。ラスト3kmは獣が現れそうな木々茂る簡易鋪装で、ボコボコのコンクリートに数メートルごとに道を這う鉄網がタイヤを襲う悪路が続く。99年の開催時、初めて採用され全ての選手を震撼させ憤怒(『だれがこんな峠見つけてきてん!』)たらしめた壮絶な峠である。
とまあ、えらく船山について力説したが、それほどまでに厳しい峠が最後に待ち受ける初日を今日は一体誰が制するのか?8月15日7時ジャスト、史上最多42名が木曽福島を一斉にスタートした。
木曽福島の黒川荘をスタートし、国道361号の旧道へと入り一息つく暇もなくひとつめの地蔵峠に突入した。今大会では昨年出場した東京大学・山岸選手からひとつめの峠のトップ通過選手に賞品が贈られることになっており、「山岸賞」目指して各選手がアタックを開始!まずは西村(京大)が果敢な飛び出しをかける。「実はじょーだんのつもりで飛び出したんですが・・・」(西村)、これに阿部(シマノ)がチェックを入れたために「ここでやめたら怒られそうだったので(苦)」必死のアタックに変貌。さらに斉藤(foobar network)、続いて高橋が集団から先行。中盤からは白石が一気にスピードを上げ多くの選手を後方に遅れさせて山岸賞をゲット!
地蔵峠 - 白石(阪大)、阿部(シマノ)、矢澤(京大)、平井(C.A.グッドウィル)、春原(京大サイクリング部)、高橋(京大)
地蔵からの下りで徐々にトップ集団が形成される。上位6名から高橋が遅れ、春原は必死にトップに食らい付き、5名が一団となり長峰への登りへと差し掛かった。長峰では淡々とローテーションが進み、集団のまま峠をクリア。矢澤がトップ通過した。下りが得意な矢澤が長峰をトップ通過したまま一気に下り始める。一方、下りが苦手な白石が若干の遅れを取る。後方では、約十名のセカンドグループが形成された。グループのメンツは以下の通り。
長峰峠 - 矢澤、阿部、平井、春原、白石- - - -高橋(京大)、松村(京大)、西村(京大)、佐藤(阪大)、紫芝(Verdad)、森島(Verdad)、都築(Verdad)、町田(セレーノ)、山本(セレーノ)、斉藤(foobar)=セカンドグループ順不同
鈴蘭峠手前の平地でトップから白石が遅れを喫するが、長いトンネルで再び4名に合流し、そのまま登りに入った。阿部、矢澤は淡々とした表情、平井はやや厳しく、春原は必死の形相である。鈴蘭の登りでトップ復帰した白石が勢いよく前方に出るがラストは集団のまま峠を通過。
鈴蘭高原
矢澤、春原、阿部、平井、白石- - - -セカンドグループ
後方集団では高橋が単独で猛追を開始!しかし片側通行の信号待ちにつかまり吸収されてしまう。80km地点、チェックポイントに辿り着いたが、補給もそこそこに(阿部曰く「じっとしてたらお腹が痛くなるからはよ行こ」)トップ5名は大雨に打たれながら終盤戦へと突入。後続グループとの差は約4分である。カテゴリー3級の位山峠での闘いは阿部、白石の激しいアタックに平井も反応。矢澤は淡々とイーブンペースを保っている様子。調子の善し悪しは分からない。前方でかけあいが続く中、限界に近い表情の春原が徐々に遅れてしまう。位山峠がせまってきた。阿部、白石の攻防は最後まで続き、ほぼ同時に峠を通過。トップは阿部、白石に絞られたか?・・・という予測も束の間、下りの途中で二名は乗用車にはばまれ、クルマの前へ出た阿部、まごついてしまった白石、ここで明暗が別れてしまう。阿部に取り残された白石は下り途中でコースに迷ってしまい、後方から来た矢澤、平井と合流。遂に阿部が単独トップに躍り出た。
位山峠 - 阿部、白石、平井、矢澤、春原
いよいよラスト、「悪夢の激坂」船山を残すのみとなった。十数パーセントはあろうかという激坂が突然、トップの阿部に襲い掛かる。「あと何キロ?」この言葉をサポートカーに5度は問いかけたという阿部。それが船山の恐ろしさを物語っているかのようだ。「あと3km!」簡易鋪装の悪路に入った阿部、雨と泥でグショグショになった体で渾身の力を振り絞る。「23(リア)だったのが痛かった!25で走りたいと何度思ったことか!」(阿部)。しかしながら貫禄の走りで船山を制し、雨の第一ステージを優勝で飾った。
一方、後方では矢澤と白石が鬱蒼と茂る木々のざわめきと雨音だけが響く峠で静かに勝負。必死にもがく白石に矢澤が淡々と応酬。ラスト1.5km、「あぁーーー」という声を漏らしながら白石が力付き、矢澤から遅れてしまい、ここで勝負にピリオドが打たれる。「白石くんの断末魔の叫びを聞いてしまった」(矢澤)。そして、最後までトップグループにいた平井も中盤からひどくなった足のつりが限界にきたのか、一気に遅れを取り、必死で4位フィニッシュとなった。そして、彗星のごとく現れた春原は大健闘の末、5位に。セカンドグループのトップ争いは、位山峠の登りから西村が一気に独走を開始し、そのまま船山を単独走破して6位となった。
船山フィニッシュ - 阿部、矢澤、白石、平井、春原、西村
まさに泣く子も黙る戦慄の峠、船山。その後も選手らはうつろな表情で、苦笑いの表情で、憤怒(?)の表情で、生命力を失ったような表情で、山頂を目指した。女子選手ながら25位でフィニッシュした関家選手は「(船山コースを発案した)竹村さんを串刺しにしたい!」と満身創痍の表情でひとこと。狂った京大生は「船山、削ったるー」。様々な感想を残しつつ第一ステージの幕が降りたのだった。