2nd STAGE - 8/16 Fri.
NHK連続テレビ小説「さくら」の舞台である飛騨高山のユースホステルをあとにした42名の選手達。今日は大会三日目、第2ステージ。丹生川村役場をスタート地点に平湯から安房峠、白骨温泉を経て、夏のマウンテンサイクリングで有名なサイクリストのメッカ、乗鞍を目指す85km。乗鞍だけでも充分過ぎるほどに厳しいコースであるが、それ以前に激しいバトルが強いられるのがツ-ル・ド・信州である。
午前7時ジャスト、オープン参加でこの日から出場の小池朋美(TBC)を加えた42名が一斉にスタート。まずは標高差1650mの平湯峠を目指す。クルマがひっきりなしに通る片側二車線の国道を選手は一団となって走行。雄大な山々を背景に色とりどりのジャージに身を包んだロードマンが大集団で走る風景は圧巻のひとことだ。
スタート直後、いきなり斉藤(foobar network)がアタックを仕掛け、岡本(シマノドリンキング)も反応。信州おなじみのスタートアタックだ。斉藤は単独でどんどんと先行し、瞬く間に集団と20秒の差が開いた。集団は阿部を先頭に淡々と進行する。
9km地点、斉藤のペースは上がる一方、集団との差をグングン広げていく。と、集団から関家がひとりで飛び出しをかけ、斉藤の追走を開始。13km地点で関家はつかまるが、ここで斉藤と集団との差は3分10秒まで開いてしまった。そしてさらに斉藤を追うために独走で飛び出した選手がひとり、西村(京大)である。後方では徐々に遅れ選手が出始め、斉藤、西村、19名の大集団、遅れ選手がバラバラ、の状態で平湯への登りに突入。
今大会のコースにしては比較的鋪装が整い路幅が広い平湯の登りを斉藤が息づかい激しく登りつめる。後方集団との差は一時、5分近くにまで開く。西村もまだ単独で健在だ。集団からは白石がアタック、続いて山形(東大)が勢いよく反応した。「あともうちょっと!」視界広がる峠の山岳ポイントラインに斉藤が飛び込んできた。斉藤、20kmに及ぶ独走で山岸賞をゲット!西村は2位のまま通過。続いて集団から抜け出した山形が3位を獲得。白石(阪大)、阿部(シマノレーシング)が続く。
平湯峠 - 斉藤、西村、山形、白石、阿部、春原、細川、高橋、町田、矢澤、森島、都築、紫芝
平湯から下ったところのバスターミナル。補給には全く手をつけずチェックポイントを通過していった斉藤、3分後には西村、そのすぐ後方には山形と下りで攻めまくった矢澤、阿部らが通過。いずれも取るものもとりあえずあわただしく追走劇を続けている。すさまじい気迫だ。
ふたつめの安房峠、斉藤は必死の逃げをキープするも、西村はクルマに阻まれる不運と消耗でとうとう後方につかまってしまう。後方集団を形成するメンツは阿部、白石、山形、高橋、町田、高橋、春原。なかでも山形は「昨日、リタイヤしたため船山を登らなかったおかげで!」パワーがある様子だ。この追走集団の中から中盤、白石、山形が一気にスパーク、峠まですんでのところで斉藤は白石に背中をとらえられてしまった。
安房峠 - 白石、斉藤、山形、阿部
安房峠から白骨温泉までは上高地乗鞍林道をひたすら下る。落石が散在し、道がデコボコに傷んでいる悪路と狭いコーナーが続く難所である。ここでは牛田(信大)が転倒し、無念のリタイヤとなってしまう。斉藤を吸収し、下り始めたトップの選手たち。観光客で賑わう白骨温泉を通過したあとは、蛭窪トンネルの小さな峠を越え、一路乗鞍へと続く最後の試練である。斉藤は徐々に後退し、山形、阿部、矢澤、白石らがトップ争いを展開。山岳トップは山形が初めてゲット。
蛭窪トンネル - 山形、阿部、矢澤、白石
「メカトラ!」白石がディレイラーをのぞきこむ。「リアディレーラーがいかれてしまい、インナーローもしくはアウターローしか入らなくなりました。ラストの乗鞍はほとんどアウターローを強いられた」(白石)。
お盆休みドライブの大渋滞のなか、次第にトップが絞られ始めた。阿部と矢澤は序盤から「連結列車のよう」(スタッフ)にぴったりとトップをキープしたままくっついている。その後方では白石、春原が、さらに後方に山形が追走している。
標高2715m、ダイナミックな景観、天上高くまで走る選手を仰ぎ見ることができる乗鞍の中腹まで差し掛かった。ここで、メカトラにも関わらず白石が春原を置き去りにして渾身のアタック。次第に前方の阿部と矢澤にせまり、遂に二人をとらえてしまう。さらに二人から距離を開けて白石はグイグイと走り続ける。そのまま乗鞍の山頂まで白石の勢いはとどまることなく、遂にステージ優勝の座に輝いた。
「大渋滞に気持ちがなえてしまいましたよ」。序盤から若い選手に刺激を与えるべく集団のイニシアチブを取り、ステージを牽引した阿部だったが、この日ばかりは白石をとらえることを断念、しかし最後は矢澤に4分近い差をつけて2位となった。4位は、ほとんどレース経験がないながらも大健闘を続けている春原、5位はめざましい快進撃を繰り広げた山形、6位は都築、7位・町田、そして紫芝、高橋、柳井の順位となった。