4th STAGE - 8/18 Sun.
キャラバンは一路、県境へ!ツール・ド・信州クライマックス。 阿部良之(シマノレーシング)、圧倒的な強さを貫禄を見せ付け総合優勝に!
前夜、小海町の民宿で大盛りカレーの夕食で英気を養った(?)選手、スタッフ達は8月18日、最終日の朝を迎えた。秋を思わせる高原の涼風を切り、キャラバンはなじみの宿を発ち、国道141号沿いに設けられたスタート地点、小海町役場へ下っていく。
第4ステージ、5日間に及ぶ日程も遂に今日でクライマックス。すでに42名の出場選手からは、負傷により山形(東大)、牛田(信大)が、26インチホイールの損傷で交換がきかなかった岡村(デモト)が、体調不良により嶋田(エキップあづみの)が、また膝の痛みにより関家が戦線から離脱。37名の出走である。
この日は、昨年の最終日と同様、小海を出て馬越、信州峠を経て山梨県牧丘の町まで下り、最後の難関、日本における標高差最大の大弛峠を目指す壮絶なコースである。標高500mの牧丘から2400mの峠まで、1900mをロードレーサーで登り切れる峠は国内においてここ、大弛が唯一無二だ。これでもかといわんばかりに延々と30kmにも及ぶ登りがフィニッシュまで続き、しかもラスト8km地点からの1kmは大きな岩や石がゴロゴロと散在するガレ場の未舗装路が選手を待ち受ける(もっとも昨年よりも2km分舗装されたので少しはマシになったのだが)。大弛より手前のコース、クリスタルラインも砂が浮き鉄板が道を這う狭い1.5車線路が続くため、選手にとってはパンクと落車の恐怖がつきまとう、まさに魔のコースである。リーダージャージの阿部と白石の総合タイム差は7分。アクシデント次第ではくつがえる可能性も大きい。他にも僅差で総合順位争いを繰り広げている選手が多く、この日でどれだけ順位が変動するかが見ものである。なお、昨年出場の笹井選手によって、この日大弛峠で最も元気な走りをした選手に標高差分の2360円が「大弛賞」として贈られることになっている。
午前7時、定刻通りのスタート。小さな飛び出しがあった後、山岸賞をかけてのアタックが決まったのは5km地点。一度飛び出しをかけてつかまったセレーノA&Tヤマダの町田と山本が再び有終の美を飾るべくアタック。真っ赤なジャージ、ヘルメットに身を包んだ朋友二人が風を切る姿に女子スタッフからは「かっこいい~(*^_^*)」と黄色い声が。集団からは高橋、細川の京大勢がそろって追走。さらに松村(京大)が単独で飛び出した。後続では早々に遅れ選手が出始め、木下(京大)、小池(TBC)らが懸命に踏んでいる。
ひとつめの馬越峠がせまってきた。徐々に山本が町田から遅れ始め、セレーノは分解してしまう。町田は独走をキープするが、追走選手は後続につかまってしまい、そこから阿部(シマノ)、白石(阪大)、矢澤(京大)、佐藤(阪大)、斎藤(foobar network)、森島(Verdad)、春原(京大サイクリング部)、松村、紫芝(Verdad)、山本らが町田を追う格好となる。しかし町田のスピードはとどまらず、そのまま山岸賞をゲット!
馬越峠 - 町田、白石、阿部、矢澤、斎藤
県境の峠、信州峠を目指す途中で遂に町田は後方からスピードを上げた阿部、白石、矢澤の三名に背中をとらえられた。視界の左右に見渡す限り野菜畑が広がる一直線の登りでトップは矢澤、阿部の二名、続いて町田、白石、やや遅れて平井(C.A.グッドウィル)、その後に前出のメンツが追う形勢。峠が目前にせまる33km、町田の相棒、山本が遂に力尽きてしまう。信州峠は阿部、矢澤の一騎打ちとなるが、阿部が難なくトップをものにしキャラバンは遂に山梨県へと突入。
信州峠 - 阿部、矢澤、白石
次なる山岳ポイントへの道は瑞牆山荘への登り。阿部と矢澤のペアはしばらく続くが中盤になり、阿部が矢澤を置き去りにし独走を開始し、瑞牆のポイントを1分差でトップ通過。遅れた矢澤に後方から白石が追いつき今度はこの二人がペア走行となる。その後では、麦茶に黒砂糖を溶かしたスペシャルドリンクの調合をスタッフに依頼した町田が必死の走りを続けるが平井にとらえられ、平井は「やっと登りに慣れてきましたよ」というセリフを残してそのまま猛烈な追い上げを始めた。また、後方集団からは紫芝が独走、さらに竹村(TBC)が周囲を驚愕させるペースで集団にせまる。トップと集団はここで6分半の差が開いた。情勢は以下の通り。
瑞牆 - 阿部- -白石、矢澤- -平井- - 町田- - 紫芝- -高橋、春原、斎藤、佐藤、松村、森島、都築(Verdad)、柳井(阪大)、竹村=7位以下は順不同
続く木賊峠の登りでも阿部は独走のまま。続く白石、やや遅れて矢澤。ここで平井が矢澤をとらえてさらに白石まで追い付いた!後方では今なお町田が懸命の独走、続いて紫芝、そして集団から先ほど追い付いたばかりの竹村がひとり飛び出す異様な速さを見せている。
木賊峠 - 阿部--白石、平井- -矢澤- -町田- -紫芝- -竹村- -集団
「自分のペースで下ればきっと前に追いつくはずと思っていた」。そんなコメント通り、矢澤が得意の下りで一気に白石と平井に追い付いた。鬱蒼とした木々、狭い路幅に砂が浮く悪路が続くクリスタルラインの下り途中でようやくチェックポイントが見えてきた。「阿部さん、チェックポイント見逃して通り過ぎちゃいました」とスタッフの稲井が知らせる。サポートカーが阿部に追いつき、阿部のサコッシュを渡すと同時に登り途中で阿部は2分ほど補給をかねてストップ。後方の三名とのタイム調整をおこない約3分の差のまま再スタートとなった。クリスタルライン最後のポイントは乙女高原である。これをクリアすれば、いよいよクライマックスの大弛峠を残すだけだ。乙女高原での順位は木賊とほぼ変動なし。ここから一気に山梨県牧丘まで下り、長く苦しい最後のヒルクライムへと選手は突入していった。
乙女高原 - 阿部- -白石、平井- -矢澤- -町田- -紫芝- -竹村
うんざりするほど長いダウンヒルを下り、牧丘町集落にたどりついた阿部。小さな点滅信号を左折すると大弛の登りに突入だ・・・と、ここで阿部は一瞬ながら直進してしまいコースアウト。何とかコース復帰し大弛を登り始めたところで白石、平井が「阿部さんの背中が見えた!」と同時にペースを必死で上げ、ここにきて阿部、白石、平井が三つ巴となった。
延々と続く登りを阿部、白石、平井は「就職活動の話などしながら」(平井)、今なお軽快に登っていく。後方では矢澤が単独で追走を強いられ、紫芝、3分遅れて竹村がひとり旅。集団では、互いの総合タイムを気にしながら最後の力を振り絞る精神戦と体力戦が展開されていた。
いよいよラスト8km、悪路のダートがトップ3名にせまった。しかしMTB世界戦代表の白石を始めシクロクロス常連の阿部、平井も難なく1kmのガレ場をまとまりながらクリア。再びオンロードに戻ったラスト5km、阿部が遂にアタック、一気に白石、平井を引き離しにかかる。二人になった白石、平井だが、ここでサポートカーから後方の矢澤が1分半にまでタイム差を縮めていることが知らされ、「今日の3位をなんとしてでも取りたい!」平井を白石がサポートする展開に。しかし、一人逃げる阿部との勝負のためにラスト4kmで白石は平井を置き去って阿部を猛追!ほどなく阿部に追い付いた白石が、勢いに乗ってそのままラスト1kmで最後のアタック!
針葉樹林が茂る独特の光景に変わり、峠のパーキングが路肩に見え始めたラスト300m、長かった最終ステージで有終の美を飾った白石が大きくガッツポーズを掲げて優勝に輝いた。そして、白石を始め若手選手に大いなる刺激を与えた阿部が、二日目からのリーダージャージを難なく守り通し、トップ選手としての強さと貫禄を見せ付けて総合首位のまま2位フィニッシュとなった。そして3位は最終日、会心の走りで終えた平井が、4位は最後まで闘う姿勢を守り抜いた矢澤が、5位は大弛峠での怒涛の走りで上位に駆け上った斎藤となり笹井賞をゲット。6位は昨年同様この峠で強さを発揮した紫芝が、7位は京大勢をノックアウトした竹村が、8位は紫芝を支えた都築が、9位は阪大の最年長の佐藤が、10位はレース経験がほとんどないながら連日果敢な走りを見せた春原。序盤のセレーノアタックから渾身の独走を続けた町田は、大弛で無念のパンクに見舞われ15位となった。
選手42名、スタッフ16名が真夏の信州を駆け抜けた5日間。このレポートに名を挙げることができなかった多くの選手、スタッフらを含めた全ての参加者によって数多くの輝ける瞬間が刻まれた。雨の降るあいにくの閉会となったが、全員が笑顔で大弛峠をあとにし、2002年のツール・ド・信州に幕がおりた。
各賞
総合優勝:阿部良之(シマノレーシング)
総合2位:白石真悟(大阪大学)
総合3位:矢澤真幸(京都大学自転車競技部)
山岳ポイント賞:阿部良之(シマノレーシング)
新人賞:高橋晋司(京都大学自転車競技部9
綾野賞:春原広明(京大サイクリング部)、関家朋子、小池朋美(TBC)
今日のひとこと=大会をふりかえって
阿部良之:チェックポイントを気づかずに過ぎてしまい申し訳ない。総合優勝でき、2回のステージ優勝もできてよかったです。知らないコースが多く、練習にもなって面白かった。また機会があったら参加したい。
松村陽一:全体を通して負け続けたけれど、苦しくも楽しいレースでした。総合10位に入りたかったなあ。
細川倫央;来年は山岳ポイントを狙います。
牛田光昭:2日間しか走れなかったけど、サポートできたのはいい経験でした。やっぱりサポートより走りたい~!来年また来ます。
紫芝智志:チームプレイもできたし、楽しかったです。(アルコールによる結束力という噂も)
森島直人:ツール・ド・信州に来て体重が増えるのはVerdadだけでは?
都築正浩:来年もまた来たいです♪
山本健一:学生の頃の気分に戻れて楽しかったです。
渋谷智一:綺麗な女性のレーサーとお知り合いになれてうれしかったです。
関家朋子:完走できなくて残念。若い人たちから元気をもらって面白かったです。
小池朋美:(リタイア直後に一言)このまま消えてしまいたい・・。さらに精進しま~す。